その「常識」、本当に正しいですか?
経営をしていると、あたり前のように語られる言葉がいくつもあります。
「売上や利益を伸ばすことが最優先だ」
「社員の主体性を引き出せ」
「リーダーは先頭に立つものだ」
「目標は明確にSMARTに設定すべきだ」
これらは、経営の世界で長らく「常識」とされてきたことです。
でも、ここで立ち止まって考えてみてください。
その常識、本当に正しいのでしょうか?
もしかすると、「常識が違っている」のかもしれません。
この記事では、4つの視点から「常識を疑う」問題提起をお届けします。
1.売上や利益 ― 数字を追うほど顧客は離れていく
経営者にとって、売上や利益は生命線。だから数字を追いかけるのは当然だと考えますよね。
でも、数字に執着するほど、逆に数字が逃げていくことはないでしょうか?
営業が「契約を取ること」を最優先にすると、顧客の声を聴くよりもクロージングが先になる。利益率を重視するあまり、サービスやサポートの質を削ってしまう。短期的には数字が立つかもしれませんが、その積み重ねで顧客の信頼は確実に失われていきます。
本来、売上や利益は「目的」ではなく「結果」です。
顧客に本当に価値を届けたからこそ、副産物として数字がついてくる。
それなのに、結果を目的化してしまった瞬間に、経営はズレ始めるのです。
「売上や利益を目的にする限り、数字は逃げていく」――これが逆説の真実です。
2.社員の主体性 ― 主体性は「引き出す」ものではない
「社員が主体的に動いてくれない」と嘆く経営者は多いでしょう。そこで研修を行い、権限を委譲し、制度を整える。これも一見正しい打ち手に見えます。
しかし実際には、社員の主体性は「育てるもの」ではありません。もっと正確に言えば、もともと人は主体性を持っているのです。
問題は、組織がそれを「奪っている」こと。
細かすぎるKPI管理、重すぎる承認フロー、チェックリスト漬けの仕組み…。
これらは表向き「効率化」「標準化」として導入されますが、裏では社員の考える力や挑戦心を奪ってしまっています。
だから本当に必要なのは、「主体性を引き出す」ことではなく、「主体性を奪っている仕組みをやめる」ことなのです。
3.リーダーシップとマネジメント ― 「何もしない勇気」
「リーダーは先頭に立て」「率先垂範せよ」――これも経営の現場でよく聞く言葉です。
けれど、その姿勢が社員の自律を止めてはいないでしょうか。
リーダーがすべてを決め、動き、導けば導くほど、社員は「待ち」の姿勢になります。
マネジメントが仕組みを細かく整備すればするほど、現場は思考をやめ、指示待ちになります。
つまり、「リーダーが動くほど、メンバーは動かなくなる」のです。
経営者に必要なのは、むしろ「何もしない勇気」。
社員に任せきる覚悟を持ち、失敗をも受け止める。そうして初めて、社員は自ら考え、力を発揮します。
マネジメントも同じです。管理を強めることは短期的な成果にはつながりますが、長期的には人の成長を奪います。
リーダーの本当の役割は、「何をするか」ではなく、「何をしないかを決めること」なのです。
4.目標の捉え方 ― 目標は「未来の仮説」
「目標はSMARTに」「高く明確に」――これもまたビジネスの常識です。
ですが、目標が数字で区切られると、人は「そこまでやればいい」と成長を止めてしまいます。
そして、未達になれば「失敗」とされ、挑戦する意欲を削がれる。
本来、目標とは「未来に向けた仮説」でしかありません。
「この道を進めば、こんな成果にたどり着くのではないか?」という仮説。だからこそ、達成できなかったら修正すればいいし、達成してもさらに更新すればいいのです。
経営者が社員に伝えるべきは、**「目標は達成するためにあるのではなく、挑戦を続けるためにある」**という考え方です。
おわりに:常識を疑う勇気が未来を切り拓く
売上や利益、社員の主体性、リーダーシップとマネジメント、そして目標。
どれも経営にとって避けては通れないテーマです。
しかし、そのテーマに隠れている「常識」に疑問を持つことで、組織は大きく変わり始めます。
数字を追うほど顧客が離れ、仕組みを増やすほど主体性が潰れ、リーダーが動くほどメンバーは動かなくなり、目標を固めるほど挑戦は止まる。
だからこそ、もう一度問い直してみましょう。
「その常識、本当に正しいのか?」
経営者の仕事は、常識に従うことではなく、常識を疑い、新しい道をつくることです。
逆説にこそ、未来を切り拓くヒントがあります。