ピーター・ドラッカー著「プロフェッショナルの条件」私の解釈

アメリカの僅か56%にしか満たない、G7諸国の中で最下位でありしかも6位と二桁以上みぞを開けられているのは何の数字なのか、あなたは知っていますか?

 しかも、日本と同じレベルなのは、これまで日本が後進国だと思っていた、東欧諸国であったり、お隣の韓国なんです。(韓国にはわずかですが負けています。)

 これは、一人当たりの生産性の順位です。生産性とは一人でどれくらい多くの成果(売上・利益など)を出せるかですから、日本は頑張ってはいるけれど、成果が出ていない国と言えるかもしれません。

 頑張っても成果が出ていない理由はどこにあるのでしょうか?その答えがこの「プロフェッショナルの条件」の中にあるように思います。

 この本の翻訳は2000年に初出版されています。20年以上も前に書かれたものです。しかし当時は気にすることなく聞き流していたことが、遅れをとっている今の日本にはとても大切な内容が書かれていると思います。

 その最も重要な内容が生産性です。失われた30年と言われている状況の中で、企業は売上や利益をどう伸ばしていこうかと必死に頑張ってきたと思います。

 あるいは、イノベーションというキーワードで、事業や組織の活性化を考えていたのではないでしょうか?

 しかし、それらの前にやらなければならないことがあった!それが生産性です。

では、「プロフェッショナルの条件」の中身を見ていきましょう。内容は、

Part1 今世界で何が起こっているか

Part2 働くことの意味が変わった

Part3 自らをマネジメントする

Part4 意思決定の為の基礎知識

Part5 自己実現への挑戦

このような構成になっています。

Part1 今世界で何が起こっているか

 ここでは、資本主義からポスト資本主義が起こっていると言っています。これは、2つの革命から生じています。

 一つは、生産性革命です。産業革命以降で産業の中心が土地から資本へと移行し資本主義がはじまりました。しかし、資本主義においても知識は不要だったと述べています。

 つまり、機械の使い方に慣れ、一つの技能に熟練していってもそれは知識ではないということになりそうです。

 知識とは使うことで、生産性が上がっていくことと定義できるかもしれません。一人の技能が上がっても、組織としての生産性を上げる為には、仕事を分析し他の人に適用できてはじめて組織の生産性が上がります。

 この意味において、資本主義においては知識は不要だったと言えます。それが知識を使うことがはじまり、生産性が格段に上昇した。これが生産性革命です。

 もう一つはマネジメント革命です。知識を使い生産性を上げることが重要になってきたわけですから、マネジメントはどこに知識を使い、知識と知識を繋げることで相乗効果を高めることが必要になってきた。これがマネジメント革命です。

 このようにマネジメントは、部下の仕事に責任を持つことから、知識の適用と知識の働きに責任を持つことで、組織の生産性を高めることが役割になってきたと述べています。

 そして、組織は常に生産性を高めていくことが求められる。理由は組織は社会に貢献する為に存在するので、社会がもっともっと良くなるためには組織がこれで良いと止まっていては社会も停滞するからです。

 営利組織であろうが非営利であろうが、組織は日々改善し続けていく使命があり、その改善の先にイノベーションがあるとも言えます。

 ところが、人は生活に安定を求める。ここにマネジメントの重要性があります。何もしなければ安定を求める人が多くなる。しかし組織のなかの仕事をする人は、日々改善を進めていかなければならないという一見すると矛盾に見えそうなことにマネジメントは対応することが求められます。

 一見すると矛盾するようですが、組織の進化改善と生活の安定は相関します。それゆえに、仕事のあり方を見直し、ここに矛盾が無いようにすることが求められます。

Part2 働くことの意味が変わった

 あなたは仕事そして働くことにどんな意味を持っていますか?自分自身や家族の生活の為に働きますか。これは大事なことだと思います、安定は基本にありますから。

 この基本的なことの為に、どのような働き方が求められていくかがこのパートに書かれています。ポスト資本主義であり知識の時代の働き方が資本主義の働き方とは違うということです。

 知識の時代の働き方においては、まずは自分の強みを知ることからはじまります。ここで聞こえてくるのが、「自分には強みなんてない」という声です。

 もし、無いのであれば強みをつくることが必要です。そして強みを生かすことに集中し、強みでないことは他の人や会社に任せる。そうすることで、生産性がどんどん上がってくることに繋がります。

 そしてその強みを生かし、どんな役割を担うのかを明確にすることで、他者の強みを伸ばし、強みに集中する時間の使い方も大切です。そうすることで、強みがますます生きてくることになる。

 この強みで、あなたは組織やチームに対してどんな貢献ができるかを明確にする。これが役割と責任へと繋がるわけです。

 組織やチームでのあなたのポジションは役職で明らかになるのではなく、役割と責任によって明らかになるということになります。

 社会人1年目でもアルバイトパート社員であっても、仕事に関わるということは役割と責任があります。

 もちろん、経験や知識、技能によって役割の変化し、責任も変化していきます。そしてマネジメントはメンバー個々の役割と責任を把握し、チームのゴール達成に向けて役割を振り分けていくことで、生産性の高いチームができることになります。

 このように自分の強みが何であり、それがチームのどのような役割を担い、どにように貢献しいくかを知り、自分を成長させていくマネジメントが求められることになり、Part3へと続きます。

Part3 自らをマネジメントする

あなたは一日(24時間)の中で、何に最も時間を使っていますか?

睡眠、目の前の問題解決、ルーティンの仕事・・・など、24時間は全ての人に平等に与えられています。その時間を何に使うかが自らのマネジメントにとって大切だとドラッカー氏は書いています。

 このことは、フランクリン・コビー博士の「7つの習慣」のなかでも語られていることとなので、大切さがわかります。

 「7つの習慣」では、重要度と緊急度の2軸で、何に時間を使うことが大切かが描かれています。第一象限は重要で緊急、第二象限は重要だけど緊急ではない、第三象限は重要ではないけど、緊急そして第四象限は重要でも緊急でもない

 自分の強みを伸ばし、集中するということは、第二象限の重要だけど緊急ではないことに入ります。

 ここの優先事項を実践できず、目の前の緊急事項に時間を集中させることは、個人としてもチームとしても生産性を高められない要因と言えると考えます。

 リーダーである皆さんは、自らをマネジメントすることと、会社の生産性を高める為に組織の第二象限を定めて行動することが求められるのでないでしょうか。

Part4 意思決定の為の基礎知識

 ここに描かれていることで注目すべきは、組織は常にイノベーションを起こしていかなくてはならないということです。Part1でも、組織は常に改善を進めなければならないと書いていることをもっと進めて、イノベーションが大事であり、そのプロセスも明記されています。

 そのプロセスとは

  1. 機会の分析からはじめる
  2. 社外に出て、問いかけ、見て、聞いて体験する
  3. 複雑に(難しく)せず単純化する
  4. 小さくスタートする
  5. ニッチで良いのでNo1を狙う

これらの5つを示しています

 ここで注目したいのは3と4の項目です。イノベーションを誰も見たことのないような大発明と捉えるのではなく、少しの工夫、改善の中にイノベーションがあることを示唆していると思います。

 また、このプロセスを通して、イノベーションは特別なものではなく、企業にとって仕事の一つであることが理解できると思います。

 このようなイノベーションを仕事として実践していくうえでも、意思決定は常に求められ、リーダーは役割として意思決定のプロセスを進めていくことが求められるとも示しています。

 なので、意思決定の原則があり、それに従って実施していくことで組織は前進していけます。

 その原則とは

  1. 問題とは、その組織が持つ基本的な問題と認識する
  2. 決定が満たすべき必要条件を明確にする
  3. 何が正しいかを考える(誰が正しいか、何が受け入れやすいかでは無い)
  4. 決定は行動の為にある
  5. 満場一致に注意する
  6. 決定が正しいとは考えない。

 社会が絶えず変化し続ける状況の中で、目の前に見える問題の本質的課題はどこにあるのか!そしてその解決によって本当に得たいものは何なのかを間違えてはいけない。

 そして、知識の時代にあっては、一人一人が専門家である。それゆえに、社長が言うから、年長者が言うから正しいとは限らないことの認識や多様性を考えるのならば、満場一致こそが特殊であり、それが普通だとすれば組織は機能不全を起こしてるかもしれないといえるのかもしれません。

 そのような中でも決定しなければ行動にも進まない。なので決定されたことは全員が行動することが前提となり、全員が行動することで、想定した結果が出ないのであれば、直ぐに決定の修正を行うことも必要とされる。

 ここまでのイノベーションや意思決定の原則を見てくると、「こんなことをしないといけないリーダーは特別な人間にしかつとまらない」と思う人がいるかもしれない。

 しかし、その思い込みは間違いです。知識をどう適用させていくか、その為に社員とヴィジョンや目標の共有を行う。社員がどのような強みを持っているのかを知るために、しっかりと話し、行動を観る。

 そのうえで、イノベーションのプロセスの中で社員や協力会社に強みを生かせるように動いてもらう。意思決定の原則に従って、社員の協力を得ることを進めていけばよいことになります。

 つまり、リーダーは仕事であり役割であることと、リーダーの貢献は何なのかを知り、その為に必要な行動を起こせばよいということになります。

 一人で何でもやろうとするリーダーは、これからの時代には大きな成果を出せないのかもしれません。

Part5 自己実現への挑戦

 最後のパートは、会社に勤めていても、一つの会社にずっと在籍することが難しくなってきている。会社を経営していても一つの事業をずっとやり続けることが難しくなっている時代になることを示しています。

 なぜならば、単純に人の寿命が延びているからです。ちなみに、2020年のデータで日本人の健康寿命は女性で75才、男性で73才です。

 仮に22才で社会に出たとしても50年以上は働けることになります。定年が60才とすれば、定年後10年以上も元気でいることになります。

 なので、人生を生きる上での人生設計を早くから視野に入れて準備をすることを提案しています。このような、あらかじめ起こりうることを想定して準備するのがプロフェッショナルなのかもしれません。

 成功法則とは決して難しくなく、シンプルだと思います。このプロフェッショナルの条件で示されていることもいたってシンプルです。

 しかし、やることはシンプルでも、結果を出せる行動の質を得る為には、何度も繰り返しやってみることが必要になります。

 最後まで読んでくださった皆さんには是非、このシンプルな成功法則をやり続けていただければと思います。

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