多様性を活かすなら対立のマネジメントが必須

 人は子供の頃から、自分の考えと違う考えを持っている人とたくさん出会ってきています。そして時には言い合いになり喧嘩することもあったかもしれません。

 社会人になっても、考えの違い、意見の違いは何度も何度も経験していて、中には自分と似た考えを持ち、意見の違いを感じない人とだけ一緒にいるという人もいるかもしれません。

 会社においても、意見の違いによる議論を嫌い、似たような考えを持つ人を集めたり、リーダーの考えに反論しない人を採用したりすることも多いと聞きます。

 子供の頃から考えの違い、意見の違いによる対立を経験し、いつの間にか対立を避ける傾向にあるように思います。

 確かに、対立することでストレスを感じ、物事が思い通り進まず、対立を避けたいと思うのは当然です。しかし、一方では多様性を活かした組織がこれからの時代には必要なんだという話もあります。

 多様性には、生まれ育った地域の文化の違いだけでなく、年齢や性別の違いの他にも経験やスキルなど様々な違った人たちが混在し相乗効果を生み出すことが出来ることに良さがあります。

 様々な違いを持った人たちが集まれば、当然考え方の違いが生まれ、そこには意見の違いが表面化してきます。

 多様性を活かす組織を作り上げるには、意見の違いとそこから生まれる対立を避けては通れません。むしろ、対立をマネジメントし、対立から新たな創造的なアイディアを引き出すことが求められます。

 また、対立を乗り越えていくことにより、人も組織も成長し、多くのチャレンジも生み出す活気のある組織になっていきます。

 ただ、対立のマネジメントが必要だと言ったとしても、その方法が分からなければ前に進むことはできません。

 そこで、本稿では対立が生まれる人としての特長から進めて、対立のマネジメントの方法を示していきます。

対立のマネジメントで大切なのは人の見えない違いにある

 人はみんな違います。顔も、体系も、目の色も、髪の色や髪形も違います。声も、話す言葉も違います。これらのように相手に明らかに違いが分かることもあれば、見えない違いもあります。

 見えない違いの中に、対立を生む原因があります。その違いとは、人の情報の収集やその情報の解釈のパターンです。

 同じ時間に同じ場所で同じ出来事や物を見たら、その場にいた人はみんな同じ情報を収集していると多くの人は思うかもしれませんが、それは間違いです。

次の写真を見てください

 これは何ですか?という質問にどのように答えますか?りんごと答える方もいると思いますが、りんご農園と答える方もいると思います。他にもたくさんのりんごという答えや、木に実ったたくさんのりんごと答える方もいると思います。

 他にも違った答えがありそうです。このように同じ写真を見て、同じ質問をしても違う答えが返ってくるのは、見ている人が違うところを捉えているからです。

 そして、もしこの写真を見ているのが、りんご農園の方ならば、りんごの実でしなった枝や、樽に重ねておいてあるりんごや木に立てかけてあるはしごに注目するかもしれません。

 写真家ならば、構図や光の照らし方などに注目するかもしれません。つまり、仕事や役割によっても捉えるところが違ってきます。

人には固有の情報収集から行動の選択までのプロセスがる

上の図を見てください

1.人は外界(自分の外)から情報を入手しますが、そこには情報の選択が行われます。

ここで重要なのは、その選択は、その人の経験や能力、役割など様々な要因で人によって違うということです。最初の違いがここで生まれます

2.次に、選択した情報の意味づけが行われます。情報には意味はありません、意味を付けるのは人です。この意味が言葉として頭の中をめぐります。

(注)ここで、情報には意味は無く、意味付けするのは人だということを説明します。

 例えば、交通事故のニュースを見たとします。

 その事故が、あなたとは無関係な状況のもとで起きたとすれば、あなたはどんな意味付けをするでしょうか?

「自分も気をつけよう」とか「怪我した人は大変だな」とか客観的な意味付けをすると思います。

 ところが、その事故があなたの大事な家族や友人が巻き込まれているとしたら、そのニュースの意味付けは違うのが当然です。

 お分かりいただけたでしょうか、この例の場合、交通事故のニュースには意味は無く、意味付けしているのはそれを見た人だということです。

3.次に意味付けした後に起こるのは感情が動くということです。

 先ほどの交通事故の事例のように、大切な人が巻き込まれているとなれば、同じ「大変」という意味付けをしても、不安や恐怖、心配などの感情が動き出します。

4.そして、意味付けと感情によって、行動が選択されます。

 この行動には、知人に電話するなどの動きがある行動もあれば、周囲の人と話し、意見を言うという行動もあります

 そして他の人に見えるのは、この行動の段階に入ってからになります。

 ご理解いただけたでしょうか、人は他人には見えないところで、情報の選択と意味付け、そして感情が動き行動の選択をするというプロセスを踏みます。

 そして情報の選択と意味付け、さらに感情の動きは経験や役割、文化的な違いなど無数の要因で違ってきます。しかもそのプロセスは見えません。

 しかし、人が見ているのは、行動の段階に入ってからです。ここに対立が生まれる要因があります。

 対立のマネジメントはこの情報集から行動に至るまでのプロセスを理解したうえで、丁寧に行うことで大きな成果が得られる考えます。