目的は同じでも、情報のチャンクが違えば対立する

人は情報を一つの塊、つまりチャンクとして処理する。例えば、「ミスコミュニケーションが起きている」という情報の場合も、ミスコミュニケーションの中味には様々な詳細な要素が入った、一つのチャンクになっています。

起きているという内容も、対立なのか、行き違いなのか、中味が色々あります。そして、このチャンクレベルの違いが、対立などのミスコミュニケーションを呼んだり、行動にぶれが生じたりすることがあります。

例えば、「ミスコミュニケーション」をテーマに話し合う場合に、ミスコミュニケーションをどんなチャンクで捉えるかで、行き違いや対立が起きることをお話ししたいと思います。

チャンクレベルには、一般化、具体化、横展開の3つがある

情報を処理する際に、チャンクレベルは非常に重要です。ミスコミュニケーションの場合、一般化、具体化、横展開の3つのチャンクレベルが存在します。

一般化は、情報を広く捉えることを意味します。例えば、「ミスコミュニケーションが起きている」という情報を一般化すると、「組織の課題」というようになります。このレベルでは、具体的な要素が欠けるため、話の内容が抽象的になりますが、広く全体像を押さえることができます。

具体化は、情報を詳細に分解し、具体的な要素を含ませることを意味します。ミスコミュニケーションの具体化の例としては、「Aさんがメールの内容を誤解したため、情報が伝わらなかった」といった具体的な要素を含めることです。このレベルでは、詳細な情報が分かりやすくなりますが、全体像が見えにくくなることがあります。

横展開は、情報をさらに広げて新たな似通った要素を含めることを意味します。ミスコミュニケーションの横展開の例としては、「Aさんが情報を誤解したことに加えて、Bさんが不明確な指示を出した」といったように、他の要素も関連付けて考えることです。このレベルでは、起きている事象の事例を把握することができますが、情報が複雑になりすぎてメッセージが伝わりにくくなることがあります。

話している意図が同じなのに、違うように見えてしまう

チャンクレベルの違いにより、話している意図が同じであっても、違うように受け取られることがあります。例えば、「ミスコミュニケーションが起きている」という情報は、チャンクレベルによって以下のように解釈が異なる可能性があります。

一般化の場合:組織の課題として、コミュニケーション全体に問題があると受け取られる可能性があります。この場合、話の展開としては、オフィスのレイアウト変更などに向くことも考えられます。

具体化の場合:特定の人や場面でのコミュニケーションの問題と受け取られる可能性があります。この場合の展開として、特定の人への教育や指導を考えるかもしれません。

横展開の場合:他の要素や要因も関連付けながら、問題となっている事例が多く出され、より複雑な問題として受け取られる可能性があります。

これらにより、もともとは、組織運営を円滑にしようという意図がずれることで対立が生じたり、誤解が生まれたりすることがあります。

情報を伝える際には、チャンクレベルを適切に意識することが重要です。

ミッションやビジョンは一般化して描く

ミッションやビジョンなどの大局的な考え方を伝える際には、一般化したチャンクを使用することが有効です。ミッションやビジョンは、具体的な詳細が求められるものではなく、大まかな方向性や価値観を伝えるものです。

一般化したチャンクレベルのメッセージは、人々が共感しやすく、理解しやすくなります。具体的な要素を含めると、メッセージが複雑になり、伝えたい意図が伝わりにくくなる可能性があります。適切なチャンクレベルを選択し、大局的な考え方を伝えることで、共通の目標を実現するために必要な方向性を示すことができます。

ただ、先ほどのミスコミュニケーションの事例のように、人には、一般化が得意な人、具体化が得意な人、横展開が得意な人がいます。

一般化が得意な人には直ぐに共感を呼ぶ、ビジョンであっても、具体化や横展開が得意な人には、ピントこないという場合も考えられます。

そこで、具体化が得意な人には、ビジョンが実現した時の具体的な事象を示すことも必要です。

横展開が得意な人には、幾つかの具体的な事象を示し、その人がイメージできるようにすることも必要だと思います。

行動計画は具体化が大切

一方、行動計画や具体的な指示を伝える際には、具体化したチャンクを使用することが重要です。行動計画は、具体的なステップや目標を示すものであり、具体的な要素が求められます。

具体化したチャンクレベルのメッセージは、行動に直結するため、人々が行動のイメージができ、実行しやすくなります。一般化したチャンクを使用すると、行動の具体的な内容や方法が不明確になり、実行にぶれが生じる可能性があります。

具体化したチャンクを適切に使用し、行動計画を明確に伝えることで、目標達成に向けた効果的な行動を促すことができます。

具体化と横展開の区別がつかないと行動が進まない

具体化と横展開は、チャンクレベルの中でも似ている部分があり、区別がつきにくいことがあります。具体化は、情報を詳細に分解し、具体的な要素を含めることを意味します。

一方、横展開は、情報をさらに広げて新たな要素を含めることを意味します。

具体化と横展開の違いを正しく理解しないと、具体化しているつもりで、行動の詳細が表現できず、似たような行動の列挙になってしまい行動計画や意思決定の際に混乱が生じる可能性があります。

横展開に関しても、選択肢を広げるつもりで横展開しようとしているのに、一つの行動を詳細に具体化しているだけで、選択肢が広がっていないことが起きます。

このように具体化したチャンクにより行動の具体的な内容や方法が明確になり、実行に向けたステップが進められます。一方、横展開は、新たな要素を加えることで選択肢を拡げ、行動にヌケ、モレを防ぎます。

まとめ

情報のチャンクを意識し、今、どのチャンクレベルの情報にフォーカスしているのか理解してコミュニケーションをすすめるだけで、生産性が大きく高まり、目標達成も進みます。

さらに加えて、組織の活性化にもつながります。難しい、スキルや知識を身につけることも大事ですが、ちょっとして理解と意識づけで人も組織も変化させることができます。

ホームページ:https://www.hricoaching.com
Facebook :https://www.facebook.com/hricoaching/

短所と長所、弱みと強みは同じですよ!

「長所は何ですか?」と聞かれても、自分のことなのに上手く答えられない人がいます。短所ならたくさん出るのに、長所は出てこない。でも、短所がたくさんあるということは、同じくらい長所があるということが言えます。

ようするに、短所は長所につながる、という前提に立ち思考を柔軟にすれば、長所は見つかります。

長所と短所と同じように、強みと弱みに関しても、相互に関連しているという前提に立てば、意外な自社の強みが浮かび上がります。

今回は、短所と長所を関係を紐解きながら長所を見つけ、同時に自社の強みについて考えていきたいと思います。

1.長所と短所は相互に関係している

長所と短所は相互に関係しています。短所があるからこそ、その反対の長所も存在するのです。例えば、頭が固いという短所がある場合、その人は一度決めたことなどからぶれない特徴も持っているかもしれません。頭が固いと思われることもあるかもしれませんが、一度決めたことを貫く姿勢は誉められるべき長所となります。自分の短所を見つけることで、自分自身の長所も見つかるのです。

2.状況が変われば、長所と短所が入れ替わる

状況は常に変動しています。同じ行動が必ずしも同じ結果につながるわけではありません。そのため、状況が変わるときには、長所と短所も入れ替わることがあります。例えば、頭が固いという短所も、一度決めたことを守る必要がある場面では、頑固な性格が役立つことがあります。自己評価ではなく、状況に応じて考えることが大切です。

3.意味付けを変えれば、長所と短所が入れ替わる

同じ行動でも、意味付けを変えることで、長所と短所を入れ替えることができます。例えば、頭が固いという短所を、「一度決めたことからぶれない」という意味で捉えると、頑固な性格が必要な仕事に向いていると言えます。スキルや性格を客観的に見つめ直し、意味付けを変えることで、自分の長所を見つけ出しましょう。

4.会社の強みや商品の強みも同じ理屈で考えられる

長所や短所だけでなく、会社の強みや商品の強みも同じような考え方で見つけることができます。例えば、競合他社と比較して「うちは開発能力がライバルよりも弱い」というのは短所のように思えます。しかし、ここで開発能力が弱いことがメリットになる状況は無いかと考えてみます。

そこで、開発能力は弱いので、既存製品のリニューアルに注力することができるというように視点を変えることも可能になります。

また、開発能力が弱いという意味付けを、一度開発した商品を長く、大切にすることができる。というような意味付けにしてみたらどうでしょうか。他社との違い浮き彫りになり、経営戦略の方向性が見えてきそうです。

物事の捉え方は一つではありません。

今回のように、短所が長所になるように、弱みが強みになるように、柔軟に思考することで、長所も強みも、そしてそこから浮き彫りになる、自分自身の特長や会社の特長が明確になってきます。

全ての人に長所があり、全ての会社に強みがあります。思考を柔軟にして見つけていくことが成長に大きく影響してくると思います。

ホームページ:https://www.hricoaching.com
Facebook :https://www.facebook.com/hricoaching/

出来事の意味付けを変えれば行動が変わる

皆さんは、行動が何によって引き起こされると思いますか?人のやる気に満ちた行動を、多くの経営者やリーダーは求めていますが、簡単に「モチベーション」という一つの単語で片づけてしまいます。この「モチベーション」という単語で片づけてしまうことが、やる気に満ちた行動を起こせる人を意図的につくり出すことを大きく邪魔していると感じています。

そこで、今回の記事では、意図的に人のやる気を引き出す方法を考えてみたいと思います。

行動は意味付けによって引きこされる

意味付けとは、私たちが何らかの行動や出来事に意味を与えることです。同じ行動や出来事でも、人によって異なる意味が付けられることがあります。例えば、ある人にとっての失敗は学びの機会であり、成長のきっかけかもしれませんが、他の人にとっては挫折や敗北感を引き起こすものかもしれません。

意味付けは自分自身で行うものですが、他の人や環境が、意味付けに影響を与えます。組織やリーダーが与える意味付けは特に強力で、メンバーの行動やモチベーションに大きく影響を与えることを理解する必要があります。

なぜ大谷翔平は「あこがれるのを止めよう」と訴えたのか

皆さんもニュースなどで、知っている方もいると思います。野球の大谷翔平選手は、2023年の対戦相手アメリカとのWBC決勝の前に、選手全員に「あこがれるのを止めよう」と訴えました。彼は、他の選手にあこがれることが結果的に勝つための行動を制限することを知っていたと思います。実際に大谷選手は、自身の成功を他の選手と比較することなく、自分なりの目標に向かって努力し続けてきましたし、今回のWBCでは見事、スター選手ぞろいのアメリカを破り優勝しました。

この例からもわかるように、意味付けは自分自身や他の人の行動に大きな影響を与えます。あこがれることや比較することは、自分を制限し、モチベーションを損なう可能性があります。意味付けを変えることで、より良い行動やモチベーションを引き出すことができるのです。

意味付けは意図的に変えられる

意味付けは意図的に変えることができます。自分自身の意図的な意味付けの変化や、他の人や環境から与えられる意味付けに対して自分の意識を向けることが重要です。

例えば、達成できなかった目標を失敗ではなく、学びの機会として捉えることができます。また、他の人の成功を刺激として受け取ることもできます。意図的な意味付けの変化は、自己肯定感や自己効力感を高め、モチベーションを向上させる効果があります。

意味付けを変える4つの方法

起きた出来事の意味付けを変える4つの方法があります。これから、それぞれの方法について説明していきます。

  • 「非難」するよりも「求める成果」

何か問題や困難な出来事が起きた場合、私たちはつい非難することがあります。しかし、非難するだけでは解決策を見つけることはできません。代わりに、私たちは「求める成果」に焦点を当てるべきです。つまり、問題の根本的な解決策や望ましい結果に向かって考えることが重要です。この方法を使うことで、より前向きなアプローチが可能になります。

  • なぜ?と理由を求めるよりは「どのように」

出来事が起きた時、私たちはなぜそれが起きたのか、理由を追求する傾向があります。しかし、このような理由探しは、焦点を問題に向けてしまいがちです。代わりに、私たちは「どのように」問題を解決できるのか、目的を考えるべきです。具体的な行動や解決策にフォーカスすることで、より効果的なアプローチが可能になります。

  • 「失敗」を悔やむよりもフィードバック

失敗やミスをした場合、私たちは悔やんだり後悔したりすることがあります。しかし、このような悔やむ感情は前に進む妨げになることがあります。代わりに、私たちは失敗から学び、フィードバックを受け取ることが重要です。他の人の意見やアドバイスを聞きながら、自分の行動を改善することができます。このように、失敗を負の感情ではなく成長の機会ととらえることが大切です。

  • 「無理、と諦める」よりもas if モデル

困難な状況や目標を達成するのが難しいと感じた時、私たちは「無理だ」と諦めてしまうことがあります。しかし、as ifモデルを使うと、達成したい目標をイメージしながら行動することができます。つまり、無理だと思うかもしれないが、もし、達成できるとすれば、というように仮説を考えるように問題を捉えてみることです。

そうすることで、無理だという固定化された考えから脱出ることができます。

以上が起きた出来事の意味付けを変える4つの方法です。非難するよりも求める成果に焦点を当てること、なぜ?と理由を追求するよりもどのように問題を解決できるのかを考えること、失敗を悔やむよりもフィードバックを受け取ること、無理だと諦めるよりもas ifモデルを使うことが重要です。これらの方法を実践することで、より前向きなマインドセットを持ち、問題解決や目標達成に向けて努力することができます。ぜひ取り入れてみてください。

ホームページ:https://www.hricoaching.com
Facebook :https://www.facebook.com/hricoaching/

企業のリーダー不足と変革が進まない本当の理由

企業の課題として、毎年のように必ず上位に来るのがリーダー不足です。中小企業で、そもそも人材不足に悩んでいる企業なら分からないでもないのですが、大企業においてもリーダー不足が課題となっている。

しかも毎年上位にランク付けされるということは、リーダー育成が上手くいっていないと考えられます。

そして、社会が大きく変革している現在において、このリーダー不足はますます大きな課題となっているように思います。

でも、考えてみてください。世の中にはリーダー育成の研修やコーチング、そして、ノウハウが詰まったベストセラーになるような本もたくさんあります。

では、なぜリーダーが育たないのか?

私たちが知っている、リーダー育成の方法が間違っているのか?

私の答えは。そもそも企業はリーダーを求めていないからだと思います。

企業が求めているのはリーダーではなく、マネジャーです。

企業が求めているのは、継続した安定にあります。そしてそれを実現する役割があるのはリーダーではなくマネジャーです。

従って、研修やコーチングでリーダー育成を進めたとしても、現実の現場では実践できない。

実践しようとすれば、反発や無視という耐えられない現実に心が折れてしまうようなことが起きてしまう。

今回のブログでは、リーダーが育たない本当の理由を掘り下げていきたいと思います。

リーダーとマネジャーの違い

リーダーとマネジャー、この二つの役割は企業の成長という点で重要な役割を果たしていますが、その違いは明確です。

リーダーはビジョンを持ち、イノベーションを追求し、組織やメンバーを鼓舞します。つまり社会の変化を見据えて、変革を推進するのがリーダーです。

一方で、マネジャーは現状を把握し、効率的に業務を遂行し、目標達成を管理します。

つまり、リーダーシップとマネジメントは異なるスキルセットと思考を必要としています。

企業が求めているのは継続的な安定

企業が求めている。というよりはそこに所属する大多数の社員、取締役や場合によっては社長が、本質的に求めているのは、継続的な安定です。

一方で、企業は競争力を維持し、市場の変化に対応するためには、効率的な業務の管理や目標達成の実現が求められます。

したがって、組織の安定と継続的な成長を実現するためには、マネジャーの存在が不可欠です。

そして、社会の変化によって、競争力、効率的な業務、目標達成、そして成長が維持できないから変革が求められます。

ところが、企業を構成するのは人です。大多数の社員(経営陣も含む)が、本質的の望むのは安定であって、不安定になる変革は敵です。

人は、変革の前は、変革を待望していても、いざ始まりそうになれば何かしらの理由を付けて反対する。

そうして、変革は進まず、その変革を推進しようとしたリーダーは挫折することになる。

リーダーが育たない本当の理由

リーダーが育たない本当の理由は、企業自体、そこにいる大多数の社員がリーダーを求めていないことです。

安定性を重視し、変化やリスクを避けながら、その中で効率を高め、何とか現状を維持する優秀なマネジャーを求めています。

しかし、その中でも企業の未来を考え、変革を追求するリーダー候補もたくさん存在すると思います。

そして、優秀なリーダー候補は、独りでは変革を推進できない事を承知し、まずは優秀なマネジャーとして多くの人の信頼を得ることに努めます。

本来ならば、この信頼を得たのちに、変革を推進していきたいところですが、ここにも人の本質が邪魔をします。

一度得た、信頼を変革という、人が望まない不安定(カオス状態)状態をつくることで失いたくないという感情が芽生えます。

ここで多くのリーダー候補(まだリーダーになっていないので)は、優秀なマネジャーの位置から変革を推進するリーダーの位置に動くことを断念します。

もちろん、変革を進めるリーダー候補もいますが、その多くは途中で多くの反対から挫折することになり、リーダー候補から下りることになります。

これが、リーダーが育たない理由であると考えます。

変革を成功させるリーダーになる方法

リーダー候補者が変革を推進する為には、「人は感情の生き物である」という大原則を理解することが必要です。理屈ではなく感情で動くということです。

そして以下のプロセスで変革を進めていきます。

  1. リーダー候補者自身の利己的目的・目標を確信する。

人は、本来、変革を求めていない。だからこそ、リーダー候補自身の心が揺らいでしまったら、人はついてきません。

そして、はじまりは利己的に自分自身が真に望む姿を持つのが自然であると思います。

 2.仲間を集める

社会が大きく変化している中で、現状を憂いている人は必ずいます。利己的ではじまるヴィジョンであるからこそ、そこには感情が入り、人の共感を得られることに繋がります。

なので、やりたいことをアウトプットし共感する仲間を集めます。

 3.小さな結果を積み重ねる

実は、変革が成功している状態は誰にも分かりません。売上数字や利益数字などは目標として出せるかもしれません。

しかし、どんな状態が、その目標を達成させるかは、イメージできてもやってみなければ分からない。

なので、小さくはじめ、小さな結果を、小さな失敗を重ねながら、同時に賛同者を増やしていきます。

 4.一気に変革を加速させる

小さな結果、小さな失敗を重ねることで、変革のゴールが具体的になり、賛同者も増えていきます。

このタイミングで全社を挙げての変革を進めます。問答無用の勢いで推進しても良いと思います。なぜならば、これまでのプロセスで推進するリスクは限りなく小さくなっているからです。

まとめ

企業がリーダー不足に悩む本当の理由は、企業自体がリーダーを求めていないことにあります。しかし、現在の社会は大きく変革しており、変革をリードするリーダーの必要性が増しています。

ここで、企業が崖っぷちに追い込まれて変革をせざる負えなくなってから変革を進めると、実は多くは失敗に終わってしまいます。余裕がなくなれば思考も鈍り、打てる活動も制限がかかり、時に間違った行動をとりがちだからです。

ところが、余裕がある時に、未来を見据えて変革を推進すれば、大きな抵抗に会い、失敗のリスクが拡がります。優秀な人材を失うことにもつながります。

そこで、今回示したプロセスにより、変革推進とリーダー育成を同時に行うことが必要になります。

リーダーを育てるためには、企業文化の変革やリーダーシップの育成プログラムの導入が重要だと言われますが、実は人の感情と変革推進のプロセスが最も大切であると思います。

ホームページ:https://www.hricoaching.com
Facebook :https://www.facebook.com/hricoaching/

ヴィジョンを示しても人は動かない

~DX時代のマネジメント~

 東京都内に20店舗以上飲食店を経営する社長のお話を伺いました。コロナの影響もあり、業績が伸びない、このままだと倒産するかもしれない、そこで考えたのが業績評価だったということです。

業績が前年対比105%以上になったら、ボーナスも給料も上げる。しかも青天井で上がれば上がるほどボーナスがもらえるぞ、さあ頑張って売上を上げよう。というように具体的な目標と達成したと時のインセンティブを従業員に提案したそうです。

 しかし、まったく売上が伸びない。そんな時、一生懸命働いてくれているアルバイトの一人が言った言葉が、「もう止めませんか、お金で人を釣るようなことは。私は、お客さんの笑顔が見たいので頑張ってるだけです。なんか嫌な感じがずっとしてるんです。」

 この言葉で、社長は何のために飲食店経営を始めたのかを思い出したそうです。それ以来、売上に関しては一切スタッフには言わないことにしたら、業績が上がり出したということです。

 この事例の中には学ぶべき多くの事があると思います。その中の一つが、目標や達成した時のインセンティブで、人は動かないということです。

 自分の経験をもとに考えると当たり前のことだと思う人もいると思いますが、マネジメントする側になると、この当たり前が忘れられてしまう。そして、この当たり前がDX時代では重要なマネジメント視点になります。

95%のリーダーが見過ごしているマネジメント視点

 ハーバード・ビジネススクールのテレサ・アマビール教授と心理学者のスティーブン・クレイマーの共同研究の結果から書き下ろした「マネジャーの最も大切な仕事」栄治出版によれば、

 社員のモチベーションを高める手法として、ほとんどのリーダーが次の3つをあげています。

  1. 具体的な目標を設定する
  2. 魅力的なインセンティブ(給与・ボーナス)
  3. 評価・フィードバック

 ところが、現実に起きていることは、違っています。先ほどの事例の社長も、具体的な目標を示し、その評価によってボーナスを社員に提案したわけですが、効果が出なかったというのが現実だと思います。

 「マネジャーの最も大切な仕事」の中では、この給与・ボーナス、評価・フィードバックそして具体的な目標は、社員のモチベーションを高める効果は限定的だとデータ解析のもとで示しています。

 そして95%のリーダーが見過ごしている、社員のモチベーションを高める方法として大切なことは、「小さな進捗の力」です。

 「小さな進捗の力」とは、日々の業務の中に存在する力です。目的や目標に向かって進む中で、やってきたことが間違いなく上手く進んでいると実感できるような事から得られる達成感と言えるものです。

 人は、このような日々の達成感の積み重ねによって、仕事に対するモチベーションを高めながら目標を達成させていくのかもしれません。

 実は、これは人の本能に由来するものです。DX時代は人の感性や感情が大切な時代だとも言えます。だからこそ人の本能は無視できません。

人の本能は未来を見ずに「今」に焦点をあてる

 人の本能は「今」に焦点をあてます。なぜならば今を生きていなければ、明日は無いからです。今の世のなかだからこそ、安心して暮らすことが出来ていますが、太古の昔は、他の大型肉食動物に食べられるかもしれず、今日の命が大切だった時代が長く続いてきた歴史があります。

 だから、本能は安心安全な社会にいたとしても、「今」に焦点を当て続けています。マネジメントにおいてもこの本能の視点は重要です。

 人は目標よりも、今の出来事、行動に意識が向きます。目標やヴィジョンを見た時には気持ちがワクワクしたとしても、いつの間にか忘れてしまいます。

 目標達成を上司から鼓舞され、励まされたとしても、今の活動によってその目標に向かって進んでいる実感が無ければ、目標達成に「あきらめ」が出てくるのも当然です。

 このように、人の本能がモチベーションに関係するとしたならば、やりがいとモチベーションの関係はどんな関係があるのでしょうか

  1. 人は「やりがいのある仕事」に従事しているからやりがいを感じてモチベーションが上がる。
  2. それとも今、従事している仕事に意味や意義を感じられるからモチベーションが上がるのか。

 この2つのどちらが、モチベーションの要因になると思いますか?

 ひょっとしたら、多くの人は「やりがいのある仕事」が先にあり、そんな仕事だからやりがいを感じ、モチベーションが上がると思っているかもしれません。

 ところが、「今」を見るという本能の視点でとらえると、今の仕事に意味や意義を感じるからやりがいを感じ、モチベーションが上がります。

 そして、多くの現実に起きていることは、今の仕事にやりがいを感じるからモチベーションが上がっています。

 さらに加えると、このことは本能からくる感情です。能力ではありません。つまり優秀(何をもって優秀と判断するかの問題は別にして)な人材か優秀ではないかも、やりがいやモチベーションに関係は無いということが言えます。

 このことを頭に落とし込んでDX時代のマネジメントを考えることが最も重要なリーダーの役割になると考えます。

 なぜならば、人の能力は「1%の才能と99%の努力」だと言われるように、その人の学びの姿勢や取り組む行動によって、後から見についてくるものだからです。

 そしてモチベーションは、この行動の質を上げることに繋がり、能力を早く、効果的に身につける為に最も重要な要因となります。

 それでは、小さな進捗に焦点をあてて、DX時代のマネジメントを進める為にリーダーが何に注目して行動することが必要かについて記事を進めていきたいと思います。

人には誰かに貢献しているという実感が必要

 小さな進捗に注目することが大切と書きましたが、何でも良いというわけにはいかないところに、マネジメントの難しさがあるかもしれません。

 仕事の進捗を実感し、それがやりがいにつながるためには、その仕事が誰かの役に立っている、誰かが喜んでいるという実感が必要になります。

 以前は3Kと呼ばれ、人が嫌がる仕事がありました、K(きたない)、K(危険)、K(苦しい)の3Kです。

 しかし、そんな仕事をしている人の中には、目を輝かせて活き活きと仕事をしている人がたくさんいます。3Kと呼ばれる仕事のほとんどが、それが無ければ社会が成り立たなくなるような仕事だったからです。

 例えば、ごみ収集や産業廃棄物の処理、土木建築の作業にビル掃除や新幹線の清掃など、その仕事が無ければ、ほとんどの人が快適な暮らしを諦めなければなりません。

 このように、その仕事が誰かの役に立っている、誰かに貢献しているという実感があれば、やりがいがわき上がり、モチベーションも上がります。

 それゆえに、マネジメントは仕事を進める為の管理から、その仕事が誰に貢献しているかを社員に実感させることを第一に考えることがDX時代には特に重要になってきます。

 つまり、リーダーのマネジメントの意識変革も必要になります。結果を第一に考えるのではなく、その仕事の目的を第一に考え、社員のモチベーションを高めることを第一に置くことが求められます。

 そんなことは分かっているけど、方法も分からなければ、目の前のやらなければならないことが多くて社員のモチベーションにまで気を配れないというリーダーの方も多いとおもいます。

 しかし、「急がば回れ」と、昔から言われるように、多様性が拡げ、人の感性を活かすことがDX時代に大きな成果(売上や利益)を引き出す最も効率的な方法だとしたら、その方法を知り、チャレンジすることを始めなければならないと思うはずです。

なぜならば、過去と同じマネジメントを続けていても、結果は出ないことはこれまでの実績を見ていれば分かることです。

 では、どこに注目してマネジメントを進めていけば良いのかを次に示していきます。

1on1ミーティングを活用する

 社員との1対1のミーティングを実施している会社が増えてきています。この場を活用したいところです。なのでまだ実施していないところ始めることをお勧めします。

 この1on1で毎回行いたいことが次の2つです。

  1. 成功の共有
  2. 失敗(困難)の共有

 成功の共有は、大きな成功である必要はありません、そんな成功はしょっちゅう起こることは無いので、小さな進捗で大丈夫です。

 そして、その進捗が上手く進んだ要因がどこにあるのか、どんな行動が上手くいったのかなどを共有し、リーダーはその行動を承認することが大切です。

 さらに、その小さな進捗は誰の為になるのか、どんな貢献につながるかを具体的に共有し、貢献の意識を高めたいところです。

 失敗(困難)の共有も大事です。目標が高ければそれだけ困難もついてきます。思うように進まないことが普通です。

 

 この困難を乗り越えることで、人は成長し、モチベーションも上がるのですが、一人では超えられない事が多いのが現実です。

 ここでリーダーが取る行動が重要になります。「この困難を乗り越えてこそ一人前になるんだ」なんて突き放すのは昭和の時代のマネジメントです。

 DX時代のマネジメントでは、具体的に困難を乗り越える為に、何をするのか、何が足りないのか、どのように行動するのか等を明らかにしていく、

そして足りないものや、分からないことなどが出てくれば、サポートするといった、コーチングのアプローチによって、確実に進捗するマネジメントが大事です。

 1on1にかける時間は25分から1時間程度かなと思います。これを月に最低でも1回は行うことは可能だと思いますが、いかがでしょうか

 この時間を持つことで、社員が確実に成長し、仕事にやりがいを持ち、モチベーションを高くすることが出来るとしたら、リーダーの第一優先の仕事として取り組むことがDX時代の組織づくりの基本になると考えます。

まとめ:DX時代は人材育成のチャンス

 企業にとって人が財産ですとか、宝です。という表現がされますが。人材育成とマネジメントを別物として捉えているように見えます。

 やるべき行動が決まっていて、それを洗練させていけば組織も成長し業績も伸びていく時代は終わったと考えて良いと思います。

 やるべきことが決まった業務はAIやロボットの得意分野です。人はそのAIやロボットを使い、生産性を上げていく能力の発揮が求められます。

 その為には、仕事の現場で主体的に業務を進めていき、新たな経験を積みながら自立的に学習していく組織づくりがDX時代に飛躍する組織であると考えています。

 つまり、マネジメントの主な役割は、人づくりであり組織づくりであると考えて良いと思っています。それが最も効率的に成果を出し続けるマネジメントであると考えます。

 加えて言えることは、企業は優秀な人材を採用することも大事ですが、その前に「やりがいのある仕事」をつくりあげることが大事です。

 その為には、企業の存在目的を明確にし、日々の仕事が誰の、どんなことに貢献するのかを常に念頭に置きながらマネジメントを実践していけたら素晴らしい企業が生まれでしょう。

 一人でも多く、DX時代のマネジメントを実践し、成長し続ける組織をつくりあげることを希望します。

ここまで記事を読んでいただきありがとうございます。

記事の感想やご意見、またもっと具体的にどうすれば良いかなどを知りたい方は遠慮なくお問合せいただければ幸いです。

多様性を活かすなら対立のマネジメントが必須

 人は子供の頃から、自分の考えと違う考えを持っている人とたくさん出会ってきています。そして時には言い合いになり喧嘩することもあったかもしれません。

 社会人になっても、考えの違い、意見の違いは何度も何度も経験していて、中には自分と似た考えを持ち、意見の違いを感じない人とだけ一緒にいるという人もいるかもしれません。

 会社においても、意見の違いによる議論を嫌い、似たような考えを持つ人を集めたり、リーダーの考えに反論しない人を採用したりすることも多いと聞きます。

 子供の頃から考えの違い、意見の違いによる対立を経験し、いつの間にか対立を避ける傾向にあるように思います。

 確かに、対立することでストレスを感じ、物事が思い通り進まず、対立を避けたいと思うのは当然です。しかし、一方では多様性を活かした組織がこれからの時代には必要なんだという話もあります。

 多様性には、生まれ育った地域の文化の違いだけでなく、年齢や性別の違いの他にも経験やスキルなど様々な違った人たちが混在し相乗効果を生み出すことが出来ることに良さがあります。

 様々な違いを持った人たちが集まれば、当然考え方の違いが生まれ、そこには意見の違いが表面化してきます。

 多様性を活かす組織を作り上げるには、意見の違いとそこから生まれる対立を避けては通れません。むしろ、対立をマネジメントし、対立から新たな創造的なアイディアを引き出すことが求められます。

 また、対立を乗り越えていくことにより、人も組織も成長し、多くのチャレンジも生み出す活気のある組織になっていきます。

 ただ、対立のマネジメントが必要だと言ったとしても、その方法が分からなければ前に進むことはできません。

 そこで、本稿では対立が生まれる人としての特長から進めて、対立のマネジメントの方法を示していきます。

対立のマネジメントで大切なのは人の見えない違いにある

 人はみんな違います。顔も、体系も、目の色も、髪の色や髪形も違います。声も、話す言葉も違います。これらのように相手に明らかに違いが分かることもあれば、見えない違いもあります。

 見えない違いの中に、対立を生む原因があります。その違いとは、人の情報の収集やその情報の解釈のパターンです。

 同じ時間に同じ場所で同じ出来事や物を見たら、その場にいた人はみんな同じ情報を収集していると多くの人は思うかもしれませんが、それは間違いです。

次の写真を見てください

 これは何ですか?という質問にどのように答えますか?りんごと答える方もいると思いますが、りんご農園と答える方もいると思います。他にもたくさんのりんごという答えや、木に実ったたくさんのりんごと答える方もいると思います。

 他にも違った答えがありそうです。このように同じ写真を見て、同じ質問をしても違う答えが返ってくるのは、見ている人が違うところを捉えているからです。

 そして、もしこの写真を見ているのが、りんご農園の方ならば、りんごの実でしなった枝や、樽に重ねておいてあるりんごや木に立てかけてあるはしごに注目するかもしれません。

 写真家ならば、構図や光の照らし方などに注目するかもしれません。つまり、仕事や役割によっても捉えるところが違ってきます。

人には固有の情報収集から行動の選択までのプロセスがる

上の図を見てください

1.人は外界(自分の外)から情報を入手しますが、そこには情報の選択が行われます。

ここで重要なのは、その選択は、その人の経験や能力、役割など様々な要因で人によって違うということです。最初の違いがここで生まれます

2.次に、選択した情報の意味づけが行われます。情報には意味はありません、意味を付けるのは人です。この意味が言葉として頭の中をめぐります。

(注)ここで、情報には意味は無く、意味付けするのは人だということを説明します。

 例えば、交通事故のニュースを見たとします。

 その事故が、あなたとは無関係な状況のもとで起きたとすれば、あなたはどんな意味付けをするでしょうか?

「自分も気をつけよう」とか「怪我した人は大変だな」とか客観的な意味付けをすると思います。

 ところが、その事故があなたの大事な家族や友人が巻き込まれているとしたら、そのニュースの意味付けは違うのが当然です。

 お分かりいただけたでしょうか、この例の場合、交通事故のニュースには意味は無く、意味付けしているのはそれを見た人だということです。

3.次に意味付けした後に起こるのは感情が動くということです。

 先ほどの交通事故の事例のように、大切な人が巻き込まれているとなれば、同じ「大変」という意味付けをしても、不安や恐怖、心配などの感情が動き出します。

4.そして、意味付けと感情によって、行動が選択されます。

 この行動には、知人に電話するなどの動きがある行動もあれば、周囲の人と話し、意見を言うという行動もあります

 そして他の人に見えるのは、この行動の段階に入ってからになります。

 ご理解いただけたでしょうか、人は他人には見えないところで、情報の選択と意味付け、そして感情が動き行動の選択をするというプロセスを踏みます。

 そして情報の選択と意味付け、さらに感情の動きは経験や役割、文化的な違いなど無数の要因で違ってきます。しかもそのプロセスは見えません。

 しかし、人が見ているのは、行動の段階に入ってからです。ここに対立が生まれる要因があります。

 対立のマネジメントはこの情報集から行動に至るまでのプロセスを理解したうえで、丁寧に行うことで大きな成果が得られる考えます。

DX(デジタル変革時代)を勝ち抜く「感性」

頑張っても業績が伸びないのは「感性」を活用しないから

 1990年代初頭に、当時一橋大学の野中教授が提唱したナレッジマネージメントは、工業の時代から情報の時代への変化を伝えていた。

 そして2000年代初頭には、情報の時代からハイコンセプト(感性)の時代に入っていると、ダニエル・ピンク著、大前研一氏翻訳の「ハイコンセプト」では提唱している。

 しかし、ようやく20年も前から言われている「感性」の重要さが現実感を増してきたように思います。

 今、日本の企業の多くは成長が止まり、伸びあぐねています。特に中小企業の経営は苦しいと思います。赤字になりさえしなければ大きく成長しなくても良い、というような半ばあきらめに近い言葉も聞こえてきます。

 そんな環境の中で、「感性」を磨くことは、暗いトンネル中で、ひとすじの光を見出すことが出来るのではないかと思います。

 「ひとすじの光」を見つける為に、私たちは肝に銘じることがあります。それは「これまでの成功ノウハウは役に立たない」ということです。

 これまでの成功のもとになっているのは、資本力や知識、経験だと思います。それが役に立たない、いつまでも頼っていれば、時代の変化に取り残されます。

 しかし、新しい視点に立ち自分たちを磨いていけば、過去に関係なくこれからを変えていくことができるということです。

 「過去と他人は変えられない」と、よく言われることです。それでも、これまでの時代は過去の成功によって積み上げられたモノによって未来が決められていたかもしれませんが、それが通用しないということです。そこでまずは、それが通用しない訳を見ていきたいと思います。

過去の成功ノウハウが使えない「3つの危機」 その1:豊かさ

 過去の成功ノウハウが通用しない理由の1番目は「豊かさ」にあります。日本の市場は成長していない、中小企業の社員の給与は30年も伸びていない。ということは頻繁に言われていることです。

 ところが、これによって生活が苦しくなる。今日の食べ物に困るという記事を新聞やテレビのニュースに出ることはほとんどありません。日本に貧困家庭がいないということではなく、貧困のレベルが違うということです。

 よく知られるマズローの欲求の5段階でいうならば、生理的欲求や安全欲求に関しては、ほとんどの人が満たされていて、社会的欲求、承認欲求そして自己実現欲求を求める人が普通になっていると言えます。

 この「豊かさ」の何がビジネスマンの危機になるのか、まず言えることは、市場には物が溢れていて価格競争になったり、差別化が難しくなり簡単には物が売れなくなっていることです。

 会社での人事の観点で言えることは、入社したての新入社員が簡単に会社を辞めてしまったり、辞めなくても若手社員の多くが、管理職になりたくないと考えていることも「豊かさ」に原因があると考えられます。

 それは、会社を辞めても次の転職先がいくらでもあると考えていたり、仕事が無くなっても直ぐには困らないという「豊かさ」からくる感覚があるからです。

 それゆえに、この「豊かさ」は、企業のマーケティングや販売のやり方を変えてきています。そして社員のモチベーションの高め方も、目の前にニンジンをぶら下げるといった方法が通用しなくなっていますし、「首にするぞ!」と言った脅しも、もちろん効果はありません。

過去の成功ノウハウが使えない「3つの危機」 その2:グローバル化

 過去の成功ノウハウが使えない理由の2番目は、「グローバル化」です。戦後の日本の経済は欧米諸国に追いつき追い越せで頑張ってきたのではないでしょうか。

 安かろう、悪かろうから、安くて品質の良い日本製品へと成長し、欧米を追い越すところまで来ました。ところがグローバル化は、アジアの国々から日本が追われ、安くて品質の良い製品やサービスが日本以外の国から日本へ提供されるようになっている。

 こんなことは当たり前で誰でも知っている。そんなグローバル化の中の競争に勝つために、様々な打ち手を考え実践しても、売上が大きく伸びないというのが多くの企業の現状だと思います。

 日本のGDPがこの30年横ばい状態でありながら、大企業の中では、過去最高益を出したという話も聞きます。ということは、多くの企業の業績は横ばいまたは減少傾向にあることは容易に推測できます。

 つまり、グローバル化という状況の中の様々な打ち手の効果が限定的であるということが言えるように思います。

 これは、打ち手の多くが過去の成功ノウハウの延長線上にあり、新たな時代の変革に対応できていないことを表しています。このことを、我々は正面から受け止め、これからの時代にどう対応していくかを考えることが必要であると思います。そしてこの本の中に答えがあります。

過去の成功ノウハウが使えない「3つの危機」 その3:AIが仕事を奪う

 過去の成功ノウハウが使えない理由の3番目は、AIに代表される技術革新です。2014年にはオックスフォード大学のオズボーン博士らがAIが人の仕事を奪うと発表がありましたが、今それが現実感を持ち始めました。

 2020年から始まったコロナ感染症のパンデミック(感染爆発)は、仕事のやり方を変えざる負えない状況をもたらしました。

 会社に出社せず、自宅での業務やリモート会議。顧客と面談することが契約や顧客満足を得る最重要の方法と思っていた営業担当者も、直接会うことを制限されリモート営業を選択せざる負えなくなった。

 このコロナ過の状況が何年も続いたことは、リモート環境が日常化し、普通になってきている。情報はわざわざ人に会って得なくても、ホームページやSNSなどのデジタルツールで十分得られることが分かってきた。

 どうしても人に会わないと仕事が進まないというのは、デジタル音痴の古くさい人間だけになってきたのかもしれません。

 あらゆる業界で、人に頼らず、機械を使わなければ会社の業務が動かない状況が、システム化(自動化、機械化)を加速させてきています。

 つまり、機械で出来ること、反復作業や定型業務(定型の事務作業、製造、定型作業の建築現場・・)そして定型的な情報提供や簡単な販売業務は今後加速して機械に変わることが見えてきました。

この大変革の時代に勝者となるには

 これからの時代は多くの業務を機械がやってくれます。その機械がやれるのは、人がプログラムを組める業務または反復的な作業が中心でAIが分析し習得できるものになります。

 では、機械に任せられないものは何なのか?簡単です、人が本来持っている強みです、人らしさです。人が誰でも持っている感情、感性が求められることです。

 ところが、多くのビジネスパーソンは優秀であるほど、人の感情を邪魔者にしてきたかもしれません。邪魔がゆえに、自分自身の感情もビジネスのシーンにおいてはどこか遠くに追いやってきたかもしれません。

 感性にしても、理屈で説明ができないことに関しては、取り扱わず避けてきたように思います。なぜならば、論理的な思考、表現が優秀さを示すことだったからです。

 産業革命以降ずっとビジネスの世界で生きる人の優秀であることの証明であったものが、今これからは機械がやれることになります。

 論理的なビジネスパーソンによって分析されたデータによってつくられた戦略のもとに、機械のように働く社員によって成長を続けてきた日本経済が低成長にあえぐのは、これまでの強みを否定されることに無意識に反発して、変革を成し遂げられないからかもしれません。

 しかし、無意識で分からずに抵抗してきたことが明らかになった今からは、新たな旅立ちに向かい進むことができると確信します。

ビジネスを成功に導く「感性」とは その1「デザイン」

 これからのビジネスパーソンに必須になるのは、人の感情を掴むことです。顧客の感情、取引先の感情そして社員の感情を掴むことです。

その為に、「感性」を磨くことが大切です。具体的には、「デザイン」の感性を磨くことです。

 これまでは、商品づくりにしても、組織づくりにしても機能性を重視してきました。ところがこれからは、機能性に加えて「デザイン性」が商品の売れ行き、組織の活性化にとって差別化につながります。

 「デザイン」は理屈ではなく、五感に訴えかけます。五感が響けば、人は感情が動き購買行動は促進されます。アップル社がデザインを強みにしているのはまさに時代に合っていると言えます。

 組織においても機能性だけを考えるのでなく、人と人の繋がり、相互作用を考慮したデザインよって、個人のポテンシャルが生き、チーム力が発揮される組織づくりが可能になります。

 そして、この「デザイン」の感性を磨く為には、目の前に見える物や起きている事象を単独で捉えるのではなく、個々の繋がり、調和を意識して全体像を見ていく練習をすること、そして自分自身の感情が動く物や事象に意識を向けることです。

 「デザイン」を磨くための勉強はあります。でも私たちはその道の専門家になりたいわけではありません。私たちのビジネスを成功させたいので、必要な時には専門家を使えば良いのです。

 ビジネスの成功の為のポイントがどこにあるのか?何が必要なのか?誰にどのように依頼すれば成果が出るのかが分かることが大切です。なので、まずは自分自身の感情が動く事象に意識を向けていくことから始めましょう。

ビジネスを成功に導く「感性」とは その2「物語」

 議論でその場で勝ったとしても、それが人の感情を動かすことには必ずしもつながらないのが人です。

 そして人の感情は「物語」によって動かされます。また「物語」によって理論的に説明するよりも理解が進むことも日常的に経験することです。

 ホンダの創業者本田宗一郎氏の物語に感動しホンダ車が好きになったり。スティーブ・ジョブズのプレゼンを聞いてiPhoneが世界一のスマートフォンだと思ったりすることは、全て理屈ではなく「物語」の力です。

 古くから残る昔話の中には、生きていくうえでの教訓が示されていることは良く知られていることです。そしてその教訓を話を楽しく読んだり、聞くうちに心に刻まれていく。そんな力が物語にはあります。

 この「物語」の力を磨く為には、「物語」を読み、書くことです。まずは、自社または自分の歴史物語を書いてみませんか。

 歴史には必ず「物語」があります。良いときもあれば、苦しいときもある。そんな経験があるから今の会社や自分が存在する。会社のあり方、人の人生そのものが物語なので、書くことが「物語」の力を磨くことになります。

 そして自社の商品やサービスにも歴史があります。導入の経緯や販売してからの道のりの全てが「物語」になります。自社や自社の商品の「物語」をつくることは、たとえ、同じ商品を扱う場合でも、他社との差別化を見出すポイントにもなります。

 「物語」を書くことを意識しながら、目の前の出来事には、どんな「物語」が存在するのかにも意識を向けていくことで、「物語」の感性が磨かれていきます。

ビジネスを成功に導く感性とは その3と4「調和」と「共感」

 3番目の感性は「調和」そして4番目の感性が「共感」です。この2つは、人が感情の動物であり、良好なコミュニケーションを実現し、人をまとめてチーム力を高めていくためには重要な感性であることは誰もが知っていることだと思います。

 ところが、分かっていても実行することに難しさを感じているかもしれません。「調和」を忘れて一人で物事を進めてしまう。「共感」を忘れて、こちらの主張を論理的に語って、相手を論破してしまう。

 新商品をつくり販売する場合も、顧客ニーズに合っていると言いながら、顧客の心に「共感」するよりも、売る側の理屈で商品を押し付けていることもよくあるケースです。

 この分かっているけど実行が難しい「調和」と「共感」の感性を磨く為には、繋がりに意識を向けていくことです。

 私たちが生きている世界は、すべて何らかの繋がりがあり、いずれは回りまわって自分に返ってくる。何一つ、個では成りたつことは無く、繋がっているという前提で目の前の事を見ていく。

 これは、哲学的な話ではなく、事実です。ただこの繋がりに意識を向けていないから気づかないだけかもしれません。なので意識を向けることから始めましょう。

 繋がりに意識を向けることで、個々の相互関係から全体像が見え、「調和」が生まれ、相手との関係の大切さに気付き「共感」が生まれてきます。

 「調和」しなければならない、「共感」しなければならない等と考えることが、個から始まり、論理的な思惑から始まっているので、上手くはいきません。

 感性を磨くということに、特効薬はないと思います。また難しいことを考えるよりも、実行可能なことで磨く必要があります。なので、日々の意識を向けるという行動が効果的な感性の磨き方だと思っています。

ビジネスを成功に導く感性 その5「生きがい」

 5番目の感性は「生きがい」です。これもその大切さは誰もが知っていることです。

 しかし、「生きがい」を持てたらどんなに良いかは分かっているけど持てない、そして社員にも持たせたいと思っているけどできていない。

 では、どうやって「生きがい」を磨いていくのでしょう。まずは自分自身が「生きがい」を持つことです。

 やりがちな間違いは、相手(社員)に求めたり、どうしたら相手が持てるようになるかを考えたりしてしまうことです。

 人は理屈では動かないので、五感で分からせるために、自分自身が変わることです。その為に、することは次の4つです。

  1. 会社の存在目的や人生の目的を発見すること(既に持っているはずなので、発見することです)
  2. その目的達成の為の行動を選択し、行動に焦点をあてること。
  3. 目的に向かう行動は無限に存在するので、常に検証の姿勢を持つ。そして一つしか無いという制限は捨てる
  4. 主体的に行動する。自分の人生は自分の力で開いていけることを信じる

まとめ 中小企業が大きく成長するチャンスが到来

今回の記事で最も伝えたいメッセージは、大きなチャンスが到来しているということです。資産もない、優秀な学校を卒業した社員もいない、大きな生産工場ももちろん無い、という状況でも勝てるということなんです。

 なぜならば、過去の経験、ノウハウが使えない時代に入ったからです。しかも必要なのは人が本来持っている感性です。学歴でもお金でもありません。

 うちは中小企業だからと諦めるのではなく、新たな挑戦の旅に出るチケットを誰もが持っているということが言えます。

 ただ、どうすれば感性を磨き、それをビジネスに使っていく方向に経営の舵を切らなければなりません。

 

 この方向転換には勇気が必要かもしれません。しかし、未来の成功は感性を磨いた先に必ず見えてきます。この記事を読んでいただいた方が、新たな挑戦の旅に出ることを期待いたします。

 この記事を最後まで読んでいただき感謝いたします。私の目標はリーダー育成で№1になることです。

 リーダー育成に関心のある方は、以下のFacebook、Youtubeもご覧いただければ幸いです

 Facebook

https://www.facebook.con//hricoaching

 YouTube

https://www.youtube.com/channel/UCSBk-BKWftt9M_epCBQRR-w

7つの習慣を読んでみて思う!

今回のビジネス書は、全世界で3000万分以上、日本国内でも220万部を超え、今でも売れ続けているベストセラーの「7つの習慣」です。

 DX時代と言われる変革の時代であるからこそ、あらためてここに示されている原則を学び、実践することが求められるのではないかと思っています。

 それは、DX時代はAIや機械が労働の中心に入ってくる社会であるからこそ、人であることの価値が問われてくるからです。

 こんな現在において、皆さんは自分自身の人生をどのように歩みたいでしょうか?

他人に自分の人生をゆだね、環境は社会の変化に押し流される人生を歩みたいでしょうか?それとも、自分自身の人生なので、他人や社会の変化に関係なく、自分の力で切り開いていきたいでしょうか?

当然、自分の力で切り開いて進みたいですよね!その方法が「7つの習慣」には示されています。

短い言葉でこの本の内容を説明するならば、表面的な出来事に翻弄されず、真の自分自身の求める人生を進む為の指南書と言えるかもしれません。

その指南書が7つの習慣として示されています。その7つとは、

  1. 主体性を発揮する
  2. 目的を持って始める
  3. 重要事項を優先する
  4. Win-Winを考える
  5. 理解してから理解する
  6. 相乗効果を発揮する
  7. 刃を研ぐ

となります。

第一から第三までは私的成功を成し遂げる為の習慣が示され、第四から第六までは公

成功の為の習慣で、第七は全てに関わる内容の構成です。個人の成長無くして、組織の成功は成し遂げられないということですね。

 それでは、第一の習慣の内容からはじめていきます。

第一の習慣:主体性を発揮する

 ここで示される「主体性を発揮する」とは、自らの人生に自らが責任を持ち、自らの力で切り開いていくという意味があります。
 
 仕事や多くのコミュニティ活動の中で、イニシアティブを取るとか、自分で考え行動するとか、と言う前に、自分の人生について自分が責任持ちましょうということですね。
 
 これが第一の習慣として示されているということは、ここが全ての始まりであり、多くの人に欠けている事なのかもしれません。
 
 では、主体性の反対は何でしょうか?それは反応的と示されています。他人の言動に心が奪われ、上手くいかないことは他人の責任にする。あるいは、仕事が上手くいかないのは社会環境が悪化しているからだというように環境の責任にする。
 
 自らの人生に責任を持つことは理解できるけど、会社という組織の中で仕事をし、社会の中で生きている以上、他人や環境に左右されるのは当然で、自分の力ではどうしようもないことが多くありすぎると思うのも当然だと思います。
 
 そして、自分の力ではどうしようもないことで、不安や怒りそして喜びといった感情が動かされる。その感情も重なり、あきらめてチャレンジが無くなったり、怒りの為に喧嘩が起こったりすることも容認してしまうこともあります。
 
 ところが、「7つの習慣」では、自分の力だけではどうしようもない結果は当然あるとしても、それによって自分の望む人生に向かって進む行動を遮断したり、行動を阻むような感情や考えは、自分でコントロールできると言っています。
 
 このことに関して、「7つの習慣」の中では、示されてはいないですが、補足したいと思います。添付の図1を見てください。
自分の外で起きていること、これを外界と呼びます。この外界には様々なものが含まれます。他人の言動、良いことも悪いことも含めた出来事、社会環境、自然環境などありとあらゆることが含まれます。
 
 この外界から人は情報を自分の五感で認識することになります。そして、この認識の段階で人によって違いが出てきます。
 
 同じ場所、同じ時間に同じものを見ていても、人によって見ている箇所が違うと言うことが当たり前に起こると言うことです。
 
 また、その認識した情報をその人の脳で意味づけを行います。そうなんです、認識した情報に意味があるのではなく、私たち一人一人が情報に意味をつけるのです。
 
 そして、その意味によって感情が動かされます。その意味によって悲しみ、怒り、哀れみ、不安、喜び、感動などといった感情が沸き上がるんです。行動の選択も意味づけから始まります。
 
 そうなんです。外界の情報には意味は無く、私たち自身が意味づけをし、それによって感情が動き、行動が選択されるという仕組みで動いているんです。私たちの感情も行動も他人が決めているのでも、環境が決めているのでも無い!私たちが決めているんです。
 
 そして、行動によって結果が出てきます。ただし、その結果は相手や環境によって思い通りになるかわ分かりません。けれども、相手や環境を一つの情報として受け取り、その情報をもとに、行動を選択していけば、思い通りの結果になる確率は上がっていきます。
 
 しかし、相手や環境に意味があると思い込み、感情も行動も相手次第となれば、柔軟性の無い行動によって結果は思い通りになることは無いかもしれません。
 
 そこで、第一の習慣では、主体的に生きる為のワークが提唱されています。
1.         関心の輪を描く
①       神に円を描きます
②       その中に、自分自身を振り返ってみて、関心があることを思いつく限り書き出してみる
2.         影響の輪を描く
①       先ほど書き出した、関心のあることの中で、自分自身がコントロールできることを選択する
②       自分自身がコントロールできなくても、影響を与えることができることを選択する
3.         影響の輪を広げる
①       影響を与えることができることを、自分自身がどう行動すれば、あなたが望む結果に導けるかを考え、実践する
②       コントロールもできない、影響も与えられないという内容の中で、大切だと思うことに関して、直接的でなくて、間接的にでも影響を与えることが無いかを考える
 
 よければ、このワークを試してみて、自分の影響の輪を広げていってはどうでしょうか。それによって、自分が望む人生を自分の力でつかみ取ることが可能になると思います。

第二の習慣:目的を持ってはじめる

第二の習慣は目的を軸にして人生を進みましょうという内容です。ではこの軸とはなんでしょうか?
 
 例えば、今、私たちが立っているこの大地が、揺れ動いているとしたら、まともに立っていられないかもしれません。今、どこかに向かって進んでいるとして、その向かう先が曖昧で変化するとしたら、ゴールにたどり着けるか不安になるかもしれません。
 
 ところが、「自分の人生において、何を目指しますか?」「自分の人生にどんな使命を持っていますか?」というような質問をされると、答えにつまるかもしれません。
 
 そうです、私たちは人生の軸を持たず、あるいは曖昧で不安定な軸の下で生きているかもしれないということです。その為に、主体的になれず、周囲の状況に反応的に左右され、その都度感情が揺れ動く人生を歩んでいるのかもしれません。
 
 そして、私たちが日ごろ大切だと思っていることを、人生の軸としていることが、不安定を呼び込んでいるということが本の中で指摘されています。
 
 その私たちが大切だと思い、人生の軸とし、より良い人生の妨げになっている項目は、自分以外の大切な人、例えば夫、妻、恋人に家族、他にも仕事や会社、地位、お金や所有物などです。
 
 大切に思う気持ちは良いのですが、それらを軸に置くということは、それらの変化によって感情が動かされて、主体性を無くしてしまうことになります。
 
 だから、第二の習慣では、しっかりとした人生の軸、つまり目的またはミッションを持って生きましょうと示しています。
 
 そして、このミッションステートメントを言葉で表現して、それを軸に置いて主体的に人生を歩みましょうと示しています。
 
 実は、このミッションはみんな持っている。ただそれがどこかに隠れているか曖昧な状態で放置されているだけだといいます。なので、ミッションはつくり出すのではなく、発見するものです。
 
 その発見の為に示されているのが以下です。
1.         あなたの葬式をイメージします。
2.         その葬式で、あなたの家族や友人、会社の仲間が弔辞を読んでいます。
3.         あなたは、その弔辞の内容がどんなものであれば、「自分の人生は良かった!」と思いますか。その内容を書いてみましょう。
4.         そしてそこに、あなたの役割や目標を織り込みながら短い文章にまとめます。
 
 ポイントは、現状の常識の枠を超えていくことですね。是非やってみてはいかがでしょうか!

第三の習慣:重要事項を優先する

第一の習慣は平たく言うと、自分が動けることに焦点を当てるですね、第二の習慣はどこに向かって動くのかを決めることと言えます。そして第三の習慣はどんな行動にエネルギーと時間を使うかを示しているといえます。
 
 重要度を決める基準があるということです。この基準を決める上でのワークとして次のような質問に答えるというものが示されています。
「あなたが、常日頃から行っていれば、あなたの生活の質、仕事の業績、または結果を著しく向上させる行動がそれぞれ一つずつあるとしたら、それは何ですか?」
 
 この質問答えの多くは、緊急性は無いけれど、それをやっとけば今の生活の質や仕事の業績などが大幅に改善するような内容だと思います。
 
 つまり、重要だけど緊急性が無い項目です。そこで重要事項を明確にする為に、重要度と緊急度のマトリックスが示されています(下図)
いつも忙しいのに、思うような成果が出てこない。仕事の成果は出せているけれど、何のために仕事をしているのか分からなくなるくらいに普段の生活のリズムが悪いというようなことがあるとするなら、ここでの第一領域に集中し、重要事項である第二領域の項目に時間を使えていないのかもしれません。
 
 ここで第一領域に時間を使っているリーダーの方の声としては、「分かっているけれど、目の前のことをやらなければ業績が上がらない」
 
 しかし、勇気を持って第二領域に行動を変えていくことで、第一領域の業務は減り、会社の業績も伸びると示されています。
 
 成功法則はどれも複雑な物は無く、シンプルなことが多いと思います。ただ、実行している人は少ない。それは、直ぐには結果として出てこないことが原因かもしれません。
 
 第一領域の項目は、直ぐに結果として見えるものが多いかもしれないです。それゆえに第一領域の項目を優先させてしまうのかもしれません。
 
 ここは、リーダーとしてこの人間と特性を理解して、未来の為の人づくり、組織づくりをしたいところです。

第四の習慣:Win-Winを考える

第四の習慣からは、公的成功を成し遂げる習慣に入っていきます。一人ではなく、他の人と共に、一人では成し遂げられないような大きな成功を得る為の習慣と言えると思います。
 
 その最初の需要なことが、Win-Winを考えることです。しかし、スポーツの試合などの勝負ごとでは必ず勝者と敗者が存在します。
 
 ビジネスの世界でもライバルが存在し、現場ではライバルとの競争の中で勝ちと負けが繰り返されているかもしれません。
 
 そんな中でWin-Winを考えることが大切だというのはどういうことなのか。例えば、プロ野球の試合で、巨人がいつも勝ち、圧倒的強さで優勝ばかりしていたら、巨人ファンであっても「どうせ勝つよ」と思い、試合を見ることが減り、最終的にプロ野球ファンが減ることが想定されます。
 
 ビジネスの世界でも、1社独占が長く続くと、その業界の活性化は無くなり、いずれは独占が続いたとしても、業績は伸びなくなることが予想されます。
 
 つまり、大きな枠の中で見てみると、ライバルも仲間になるということです。なので、Win-Loseを繰り返せば共に衰退し、Win-Winを進めれば、大きな目的達成に向かうということになります。

第五の習慣:理解してから理解される

一人ではなく、他の人を巻き込み一人では成し遂げられないより大きな成功を成し遂げる為の一歩として、相手に自分の様々なことを理解してもらう必要があります。
 
そして、多くの人は自分の事を理解してもらう為に、頑張って自分の進めたいことを相手に話します。聞いてる相手も、うなずいたりしてくれて納得しているように見える。
 
ところが、一向にこちらが望む行動が起きない。そこでもう一度、自分の思いを話すけれど、望む行動は起きない。
 
このような事例を体験したことはありませんか、この根本の原因として、自分を理解してもらう為の順番が違っていることが考えられます。
 
この第五の習慣は、相手に理解してもらいたいのであれば、相手を理解することが先決だと示しています。
 
人は、自分の事を理解してくれている相手の事を理解しようと思いますし、その人の為にできることはしたいと思う感情を持つと思います。
 
逆に、理解されていないと思う相手の言うことは、上下関係などがある場合の指示や命令には従っても、それ以上のことをしたいとは思わないのが普通です。
 
だあらこそ、この第五の習慣は、人の力を最大限に引き出し、チーム力を最大化させる為の第一歩になると考えます。

第六の習慣:相乗効果を発揮する

第一の習慣から第五の習慣を実践することによって、人が集まることによって、その力は何倍にも何十倍にも、そして数千倍にもなりうることを示しています。
 
ただし、その為には対立をマネージメントすることが必要だと書き示しています。なぜならば、全ての人は違うからです。
 
その違いを認め、違いから第3案を引き出すことで、相乗効果が得られると言えます。全員一致であるならば、人の力は物理的な労働力でしかありません。
 
しかし、人には創造力、思考力といった無限の力があります。この力を引き出すことが相乗効果のポイントになると言えます。

第七の習慣:刃を研ぐ

最後の第七の習慣は、第一から第六まですべてに当てはまる習慣です。それは、全ての習慣を磨き続けるという習慣です。
 
人は本能的に今に生きるものです。今を生きなければ明日は無いわけですから、動物的本能として今に生きるが当然です。
 
なので、習慣を磨き続けなければ、反応的になり、目の前の出来事に反応し、自分の事だけを考えてしまう。これは能力や意志力の前に、本能であることを理解し、自分自身への投資を怠らないことが大切になるのかもしれません。
 
以上が7つの習慣の内容です。私たちが望む最高の人生を歩む為には方法がることを7つの習慣の中で教えてくれていると思います。
 
決して複雑で理解に苦しむというような内容ではなかった、シンプルで分かりやすい内容だったと思います。しかし実践は難しいかもしれません。
 
難しいというのは、人は本能的に目の前の出来事に意識が向き、とらわれてしまうので、意志の力で行動の習慣をつくることが必要になるということかもしれません。
 
いずれにせよ自分の未来は自分で切り開いて進むしかありません。主体的に自分の望む未来を創っていきたいと思います。

ピーター・ドラッカー著「プロフェッショナルの条件」私の解釈

アメリカの僅か56%にしか満たない、G7諸国の中で最下位でありしかも6位と二桁以上みぞを開けられているのは何の数字なのか、あなたは知っていますか?

 しかも、日本と同じレベルなのは、これまで日本が後進国だと思っていた、東欧諸国であったり、お隣の韓国なんです。(韓国にはわずかですが負けています。)

 これは、一人当たりの生産性の順位です。生産性とは一人でどれくらい多くの成果(売上・利益など)を出せるかですから、日本は頑張ってはいるけれど、成果が出ていない国と言えるかもしれません。

 頑張っても成果が出ていない理由はどこにあるのでしょうか?その答えがこの「プロフェッショナルの条件」の中にあるように思います。

 この本の翻訳は2000年に初出版されています。20年以上も前に書かれたものです。しかし当時は気にすることなく聞き流していたことが、遅れをとっている今の日本にはとても大切な内容が書かれていると思います。

 その最も重要な内容が生産性です。失われた30年と言われている状況の中で、企業は売上や利益をどう伸ばしていこうかと必死に頑張ってきたと思います。

 あるいは、イノベーションというキーワードで、事業や組織の活性化を考えていたのではないでしょうか?

 しかし、それらの前にやらなければならないことがあった!それが生産性です。

では、「プロフェッショナルの条件」の中身を見ていきましょう。内容は、

Part1 今世界で何が起こっているか

Part2 働くことの意味が変わった

Part3 自らをマネジメントする

Part4 意思決定の為の基礎知識

Part5 自己実現への挑戦

このような構成になっています。

Part1 今世界で何が起こっているか

 ここでは、資本主義からポスト資本主義が起こっていると言っています。これは、2つの革命から生じています。

 一つは、生産性革命です。産業革命以降で産業の中心が土地から資本へと移行し資本主義がはじまりました。しかし、資本主義においても知識は不要だったと述べています。

 つまり、機械の使い方に慣れ、一つの技能に熟練していってもそれは知識ではないということになりそうです。

 知識とは使うことで、生産性が上がっていくことと定義できるかもしれません。一人の技能が上がっても、組織としての生産性を上げる為には、仕事を分析し他の人に適用できてはじめて組織の生産性が上がります。

 この意味において、資本主義においては知識は不要だったと言えます。それが知識を使うことがはじまり、生産性が格段に上昇した。これが生産性革命です。

 もう一つはマネジメント革命です。知識を使い生産性を上げることが重要になってきたわけですから、マネジメントはどこに知識を使い、知識と知識を繋げることで相乗効果を高めることが必要になってきた。これがマネジメント革命です。

 このようにマネジメントは、部下の仕事に責任を持つことから、知識の適用と知識の働きに責任を持つことで、組織の生産性を高めることが役割になってきたと述べています。

 そして、組織は常に生産性を高めていくことが求められる。理由は組織は社会に貢献する為に存在するので、社会がもっともっと良くなるためには組織がこれで良いと止まっていては社会も停滞するからです。

 営利組織であろうが非営利であろうが、組織は日々改善し続けていく使命があり、その改善の先にイノベーションがあるとも言えます。

 ところが、人は生活に安定を求める。ここにマネジメントの重要性があります。何もしなければ安定を求める人が多くなる。しかし組織のなかの仕事をする人は、日々改善を進めていかなければならないという一見すると矛盾に見えそうなことにマネジメントは対応することが求められます。

 一見すると矛盾するようですが、組織の進化改善と生活の安定は相関します。それゆえに、仕事のあり方を見直し、ここに矛盾が無いようにすることが求められます。

Part2 働くことの意味が変わった

 あなたは仕事そして働くことにどんな意味を持っていますか?自分自身や家族の生活の為に働きますか。これは大事なことだと思います、安定は基本にありますから。

 この基本的なことの為に、どのような働き方が求められていくかがこのパートに書かれています。ポスト資本主義であり知識の時代の働き方が資本主義の働き方とは違うということです。

 知識の時代の働き方においては、まずは自分の強みを知ることからはじまります。ここで聞こえてくるのが、「自分には強みなんてない」という声です。

 もし、無いのであれば強みをつくることが必要です。そして強みを生かすことに集中し、強みでないことは他の人や会社に任せる。そうすることで、生産性がどんどん上がってくることに繋がります。

 そしてその強みを生かし、どんな役割を担うのかを明確にすることで、他者の強みを伸ばし、強みに集中する時間の使い方も大切です。そうすることで、強みがますます生きてくることになる。

 この強みで、あなたは組織やチームに対してどんな貢献ができるかを明確にする。これが役割と責任へと繋がるわけです。

 組織やチームでのあなたのポジションは役職で明らかになるのではなく、役割と責任によって明らかになるということになります。

 社会人1年目でもアルバイトパート社員であっても、仕事に関わるということは役割と責任があります。

 もちろん、経験や知識、技能によって役割の変化し、責任も変化していきます。そしてマネジメントはメンバー個々の役割と責任を把握し、チームのゴール達成に向けて役割を振り分けていくことで、生産性の高いチームができることになります。

 このように自分の強みが何であり、それがチームのどのような役割を担い、どにように貢献しいくかを知り、自分を成長させていくマネジメントが求められることになり、Part3へと続きます。

Part3 自らをマネジメントする

あなたは一日(24時間)の中で、何に最も時間を使っていますか?

睡眠、目の前の問題解決、ルーティンの仕事・・・など、24時間は全ての人に平等に与えられています。その時間を何に使うかが自らのマネジメントにとって大切だとドラッカー氏は書いています。

 このことは、フランクリン・コビー博士の「7つの習慣」のなかでも語られていることとなので、大切さがわかります。

 「7つの習慣」では、重要度と緊急度の2軸で、何に時間を使うことが大切かが描かれています。第一象限は重要で緊急、第二象限は重要だけど緊急ではない、第三象限は重要ではないけど、緊急そして第四象限は重要でも緊急でもない

 自分の強みを伸ばし、集中するということは、第二象限の重要だけど緊急ではないことに入ります。

 ここの優先事項を実践できず、目の前の緊急事項に時間を集中させることは、個人としてもチームとしても生産性を高められない要因と言えると考えます。

 リーダーである皆さんは、自らをマネジメントすることと、会社の生産性を高める為に組織の第二象限を定めて行動することが求められるのでないでしょうか。

Part4 意思決定の為の基礎知識

 ここに描かれていることで注目すべきは、組織は常にイノベーションを起こしていかなくてはならないということです。Part1でも、組織は常に改善を進めなければならないと書いていることをもっと進めて、イノベーションが大事であり、そのプロセスも明記されています。

 そのプロセスとは

  1. 機会の分析からはじめる
  2. 社外に出て、問いかけ、見て、聞いて体験する
  3. 複雑に(難しく)せず単純化する
  4. 小さくスタートする
  5. ニッチで良いのでNo1を狙う

これらの5つを示しています

 ここで注目したいのは3と4の項目です。イノベーションを誰も見たことのないような大発明と捉えるのではなく、少しの工夫、改善の中にイノベーションがあることを示唆していると思います。

 また、このプロセスを通して、イノベーションは特別なものではなく、企業にとって仕事の一つであることが理解できると思います。

 このようなイノベーションを仕事として実践していくうえでも、意思決定は常に求められ、リーダーは役割として意思決定のプロセスを進めていくことが求められるとも示しています。

 なので、意思決定の原則があり、それに従って実施していくことで組織は前進していけます。

 その原則とは

  1. 問題とは、その組織が持つ基本的な問題と認識する
  2. 決定が満たすべき必要条件を明確にする
  3. 何が正しいかを考える(誰が正しいか、何が受け入れやすいかでは無い)
  4. 決定は行動の為にある
  5. 満場一致に注意する
  6. 決定が正しいとは考えない。

 社会が絶えず変化し続ける状況の中で、目の前に見える問題の本質的課題はどこにあるのか!そしてその解決によって本当に得たいものは何なのかを間違えてはいけない。

 そして、知識の時代にあっては、一人一人が専門家である。それゆえに、社長が言うから、年長者が言うから正しいとは限らないことの認識や多様性を考えるのならば、満場一致こそが特殊であり、それが普通だとすれば組織は機能不全を起こしてるかもしれないといえるのかもしれません。

 そのような中でも決定しなければ行動にも進まない。なので決定されたことは全員が行動することが前提となり、全員が行動することで、想定した結果が出ないのであれば、直ぐに決定の修正を行うことも必要とされる。

 ここまでのイノベーションや意思決定の原則を見てくると、「こんなことをしないといけないリーダーは特別な人間にしかつとまらない」と思う人がいるかもしれない。

 しかし、その思い込みは間違いです。知識をどう適用させていくか、その為に社員とヴィジョンや目標の共有を行う。社員がどのような強みを持っているのかを知るために、しっかりと話し、行動を観る。

 そのうえで、イノベーションのプロセスの中で社員や協力会社に強みを生かせるように動いてもらう。意思決定の原則に従って、社員の協力を得ることを進めていけばよいことになります。

 つまり、リーダーは仕事であり役割であることと、リーダーの貢献は何なのかを知り、その為に必要な行動を起こせばよいということになります。

 一人で何でもやろうとするリーダーは、これからの時代には大きな成果を出せないのかもしれません。

Part5 自己実現への挑戦

 最後のパートは、会社に勤めていても、一つの会社にずっと在籍することが難しくなってきている。会社を経営していても一つの事業をずっとやり続けることが難しくなっている時代になることを示しています。

 なぜならば、単純に人の寿命が延びているからです。ちなみに、2020年のデータで日本人の健康寿命は女性で75才、男性で73才です。

 仮に22才で社会に出たとしても50年以上は働けることになります。定年が60才とすれば、定年後10年以上も元気でいることになります。

 なので、人生を生きる上での人生設計を早くから視野に入れて準備をすることを提案しています。このような、あらかじめ起こりうることを想定して準備するのがプロフェッショナルなのかもしれません。

 成功法則とは決して難しくなく、シンプルだと思います。このプロフェッショナルの条件で示されていることもいたってシンプルです。

 しかし、やることはシンプルでも、結果を出せる行動の質を得る為には、何度も繰り返しやってみることが必要になります。

 最後まで読んでくださった皆さんには是非、このシンプルな成功法則をやり続けていただければと思います。

社員のパフォーマンスを最大化させる為のメンタルの持ち方

経営者の皆さんのほとんどは、社員のパフォーマンスを最大化したいと考えてると思います。そして、それが上手く進んでいるところと、思うように進んでいないところもあると思います。

上手く進まないのはなぜなんでしょうか?

社員にやる気が無いからでしょうか?

その原因が、経営者である皆さんの考え方や感情の持ち方にあるとしたら、これから先が明るくなってこないですか。

なぜなら、過去と他人は変えられないけれど、自分自身はあなたの力で変えることが可能なのですから。

そこで、今回のテーマは社員のパフォーマンスを最大化する為の、経営者が持つべき考え方や感情、つまりメンタルの持ち方について示していきます。

本題に入る前に、皆さんに聞きたいことがあります。

皆さんは社員に求めていることは、あなたの指示通りに動く忠実なロボットですか?

それとも、目標に向かって主体的に動く人ですか?

 このどちらが正しいということを議論したいわけではありません。皆さんが社員に求めているのはどちらかなのかを、皆さん自身が知っておく必要があることを伝えたいのです。

 なぜならば、実は忠実なロボットを求めているのに、表面的には主体性を求めているとしたら何が会社の中で起こるでしょうか?

 おそらく、普段は社員に対して、「主体的に自分で考えて行動することが大切だ」という事を様々な機会に言っていると思います。

 ところが、現場で社員が主体性を発揮すると、「何で指示を待たなかったのか」「勝手に動くんじゃない」などと注意するということが起きているかもしれません。

 この逆もあります。実は主体性を求めているのに、社員に考える時間を与えずに、具体的な指示を社員が考える前に出してしまう。

 いずれにしても、言動不一致になり、社員も経営者である皆さんもストレスを抱えることになります。

 社員に、皆さんの言うことを忠実に実行するロボットを求めてはいけないと言っているのではありません。

 社員に求めていることを、皆さん自身が自覚しているということが大切なんです。それがパフォーマンスを最大化する第一歩になるかもしれません。

 そして、本題に入っていきます。まず意識しなければならないことは、社員は人だということです。「当たり前のことを言うな」とお𠮟りを受けそうですが、ここのところ忘れている方が多いのも事実です。

 人であるということは、感情があるということです。ところが仕事だから感情は持ち込んではいけないと考えている方がいるということなんです。

 もちろん、経営者である皆さん自身も仕事に感情は持ち込んではいけないと考え、社員にもそれを求めているかもしれません。

 ところが、人であるということは感情をどんな時でも、切り離すことはできないということです。感情を出してはいけないと思っても出てしまうのが感情です。

 モチベーションのようなポジティブな感情は出したいが、怒り、悲しみ、不安などは出したくないと思っても無理だということです。

 なので、パフォーマンスを最高に持っていくためには、人の感情を意識することが必須になります。

上の図は、人が外界(自分自身の外側)から情報を受け取り、それを認識して行動に移し結果にいたるプロセスを示しています。

 まず、人は外界からの情報を脳で認識します。外界の情報には様々なものが含まれます。出来事はもちろんのこと、今置かれている環境や他人の言動もすべて外界の情報です。

 脳での認識によって、ひとは意味づけを行います。例えば、売上データを見て(認識)売上が落ちている、上がっている。5%落ちている、5%上がっているなどの意味づけが行われることになります。

 そしてその意味づけは続き、「このままではまずいぞ」とか「よく頑張った」とかと続き、感情が動かされることになります。不安、恐怖、感動、喜びといった感情が沸き上がります。この感情は行動の質に影響します。

 感情が行動の質に影響を与えるので、モチベーションが大事だとか、ネガティブな感情を持ってはダメだとかという発想になるわけです。

 一方で、認識から意味づけに至った後は、行動の内容や量の選択が始まります。5%売上がダウンしている。このままではまずい、顧客への訪問頻度をこれまでの倍に増やそう。という具合に行動の内容と量を決めていくわけです。

 そして、この行動が結果を生みます。この結果はまた外界の情報の一つになるというプロセスが常に回っていることになります。

 言い方を変えると、結果は過去の行動により生まれた情報の一つだと言えます。その結果を最高の結果にする為には、結果に至る行動を最高にすることが必要条件になることがこの図を見れば分かると思います。

 つまり、最高の結果を求めるのであれば、最高の行動をすることが必要になります。結果に意識を向けるのではなく、行動に意識を向けて、日々最高の行動を実践することが求められることになります。

 ところが、人は結果に一喜一憂してしまいます。良い結果が出れば喜び、悪ければ怒りや落胆した感情が沸き上がる。この感情は自然であり人らしい感情として必要だと思います。問題はこれが長引き次の行動に悪い影響を与える場合です。

 結果によって感情が動かされ、それが悪い影響を及ぼす場合の要因として、人の価値と結果を同じと考えてしまうことがあります。

 「お金持ちは偉い人だ」「社長は偉い人だ」「売上を上げられる人は偉い人だ」逆に「お金が無いのはダメ人間だ」「平社員は社長よりレベルが低い」「売上が低い社員は無能だ」

などと考えてしまうということです。

 すこし冷静に考えれば分かると思いますが、結果と人の価値が同じと考えるのは間違いです。人の価値は結果に関わらず、平等に大切で価値があるものです。

 なので大切なのは、「結果と人の価値は一緒にはならない」と意識することです。分かっていても、つい結果と人の価値を一緒にして、目標数字が達成できないと落ち込んでしまったり、目標が達成すると必要以上に自信を持って。いわゆる天狗になってしまうことはあると思います。

 一度できた思い込みは簡単には変えられません。しかし、「結果と人の価値は一緒にはならない」ということを日ごろから意識することが、単に理解から実践へと移行させていきます。

そして次に意識したいことは「過去と他人は変えられない。未来は分からない」ということです。

 結果と人の価値を一緒だと思う人は、過去を変えようともがいているかもしれません。他人を自分の思い通りに動かそうとしてもがいているかもしれません。

 過去は変えられません。但し過去から学ぶことはできます。未来のことは誰も分かりません。但し、望む未来に向かって、今の行動に集中することはできます。

 ここまでのことをまとめると、社員のパフォーマンスを最高にするためのメンタルの持ち方としては2つです。

 「結果と人の価値は一緒ではない」ということを意識する

 「過去と他人は変えられない。未来は分からない」ということを意識する

この2つの意識を日頃からもつことがメンタルトレーニングになります。

 このメンタルトレーニングを続けることで得られることは、間違った思い込みや変えられないものに感情を奪われることが無くなることです。

 そして、大切なことに集中できるようになることです。その大切なこととは「行動」です。行動しなければ結果は得られない。

 この行動に集中し、行動の変化に注目することです。とくに社員のパフォーマンスを最大化させるためには、社員の行動の変化に注目することが必要です。

 結果を出すための行動ができたか、できなかったかは、これも一つの結果です。そしてこの結果はその時点での社員の経験や能力によるところが大きいです。

 つまり、過去の経験に視点を当て、これからの未来の為に結果を生む行動に視点を当ててていないことになります。今を基準にして、行動の変化を見て、求める行動に向かう行動が促進されるよう応援していくことが大切になります。

 行動しなければ結果は出ないことを腹に落として、行動のパフォーマンスが最大化さえることを経営者である皆さんには目指して欲しいと思います。

お問い合わせ先

エイチアールアイ合同会社 t.hatani@hricoaching.com