目的は同じでも、情報のチャンクが違えば対立する

人は情報を一つの塊、つまりチャンクとして処理する。例えば、「ミスコミュニケーションが起きている」という情報の場合も、ミスコミュニケーションの中味には様々な詳細な要素が入った、一つのチャンクになっています。

起きているという内容も、対立なのか、行き違いなのか、中味が色々あります。そして、このチャンクレベルの違いが、対立などのミスコミュニケーションを呼んだり、行動にぶれが生じたりすることがあります。

例えば、「ミスコミュニケーション」をテーマに話し合う場合に、ミスコミュニケーションをどんなチャンクで捉えるかで、行き違いや対立が起きることをお話ししたいと思います。

チャンクレベルには、一般化、具体化、横展開の3つがある

情報を処理する際に、チャンクレベルは非常に重要です。ミスコミュニケーションの場合、一般化、具体化、横展開の3つのチャンクレベルが存在します。

一般化は、情報を広く捉えることを意味します。例えば、「ミスコミュニケーションが起きている」という情報を一般化すると、「組織の課題」というようになります。このレベルでは、具体的な要素が欠けるため、話の内容が抽象的になりますが、広く全体像を押さえることができます。

具体化は、情報を詳細に分解し、具体的な要素を含ませることを意味します。ミスコミュニケーションの具体化の例としては、「Aさんがメールの内容を誤解したため、情報が伝わらなかった」といった具体的な要素を含めることです。このレベルでは、詳細な情報が分かりやすくなりますが、全体像が見えにくくなることがあります。

横展開は、情報をさらに広げて新たな似通った要素を含めることを意味します。ミスコミュニケーションの横展開の例としては、「Aさんが情報を誤解したことに加えて、Bさんが不明確な指示を出した」といったように、他の要素も関連付けて考えることです。このレベルでは、起きている事象の事例を把握することができますが、情報が複雑になりすぎてメッセージが伝わりにくくなることがあります。

話している意図が同じなのに、違うように見えてしまう

チャンクレベルの違いにより、話している意図が同じであっても、違うように受け取られることがあります。例えば、「ミスコミュニケーションが起きている」という情報は、チャンクレベルによって以下のように解釈が異なる可能性があります。

一般化の場合:組織の課題として、コミュニケーション全体に問題があると受け取られる可能性があります。この場合、話の展開としては、オフィスのレイアウト変更などに向くことも考えられます。

具体化の場合:特定の人や場面でのコミュニケーションの問題と受け取られる可能性があります。この場合の展開として、特定の人への教育や指導を考えるかもしれません。

横展開の場合:他の要素や要因も関連付けながら、問題となっている事例が多く出され、より複雑な問題として受け取られる可能性があります。

これらにより、もともとは、組織運営を円滑にしようという意図がずれることで対立が生じたり、誤解が生まれたりすることがあります。

情報を伝える際には、チャンクレベルを適切に意識することが重要です。

ミッションやビジョンは一般化して描く

ミッションやビジョンなどの大局的な考え方を伝える際には、一般化したチャンクを使用することが有効です。ミッションやビジョンは、具体的な詳細が求められるものではなく、大まかな方向性や価値観を伝えるものです。

一般化したチャンクレベルのメッセージは、人々が共感しやすく、理解しやすくなります。具体的な要素を含めると、メッセージが複雑になり、伝えたい意図が伝わりにくくなる可能性があります。適切なチャンクレベルを選択し、大局的な考え方を伝えることで、共通の目標を実現するために必要な方向性を示すことができます。

ただ、先ほどのミスコミュニケーションの事例のように、人には、一般化が得意な人、具体化が得意な人、横展開が得意な人がいます。

一般化が得意な人には直ぐに共感を呼ぶ、ビジョンであっても、具体化や横展開が得意な人には、ピントこないという場合も考えられます。

そこで、具体化が得意な人には、ビジョンが実現した時の具体的な事象を示すことも必要です。

横展開が得意な人には、幾つかの具体的な事象を示し、その人がイメージできるようにすることも必要だと思います。

行動計画は具体化が大切

一方、行動計画や具体的な指示を伝える際には、具体化したチャンクを使用することが重要です。行動計画は、具体的なステップや目標を示すものであり、具体的な要素が求められます。

具体化したチャンクレベルのメッセージは、行動に直結するため、人々が行動のイメージができ、実行しやすくなります。一般化したチャンクを使用すると、行動の具体的な内容や方法が不明確になり、実行にぶれが生じる可能性があります。

具体化したチャンクを適切に使用し、行動計画を明確に伝えることで、目標達成に向けた効果的な行動を促すことができます。

具体化と横展開の区別がつかないと行動が進まない

具体化と横展開は、チャンクレベルの中でも似ている部分があり、区別がつきにくいことがあります。具体化は、情報を詳細に分解し、具体的な要素を含めることを意味します。

一方、横展開は、情報をさらに広げて新たな要素を含めることを意味します。

具体化と横展開の違いを正しく理解しないと、具体化しているつもりで、行動の詳細が表現できず、似たような行動の列挙になってしまい行動計画や意思決定の際に混乱が生じる可能性があります。

横展開に関しても、選択肢を広げるつもりで横展開しようとしているのに、一つの行動を詳細に具体化しているだけで、選択肢が広がっていないことが起きます。

このように具体化したチャンクにより行動の具体的な内容や方法が明確になり、実行に向けたステップが進められます。一方、横展開は、新たな要素を加えることで選択肢を拡げ、行動にヌケ、モレを防ぎます。

まとめ

情報のチャンクを意識し、今、どのチャンクレベルの情報にフォーカスしているのか理解してコミュニケーションをすすめるだけで、生産性が大きく高まり、目標達成も進みます。

さらに加えて、組織の活性化にもつながります。難しい、スキルや知識を身につけることも大事ですが、ちょっとして理解と意識づけで人も組織も変化させることができます。

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