日本の中小企業の多くが低成長にあえいでいる。いや頑張っているという方が正しいですよね。社長はもちろんのこと、社員も頑張っている。
社長は社員に檄を飛ばし、それに応えて社員が頑張り、売上はそこそこ確保できる。しかし、思うように利益が上がってこない。短期的には目標数字を達成したとしても、長期的には減少していく。
そんな中で、責任感が強く、なんとかこの状況を打開しようと社長は、自分が学び会社を変革しようと、様々な場所に出向き学び続ける。
社長が学び、社員への指示の出し方、面談の仕方も変わる。そうすると、社員のモチベーションが上がり、業績も上がってきそうな雰囲気になっていく。
やっぱり、会社のトップが学び続ければ会社は良くなる。しかし、そう思った時に、また問題が起こってしまう。それもこれまでと似たような問題が起こる。
今回の記事は、社長が学び、成長することで会社を変革していこうとすることの限界とその限界を超えていくために何が大切かについて示していこうと思います。
会社や社員のことを思うほどに社員が辞めていく
その前に、ある会社の事例を見ていきましょう。
ある商社があります。都内を中心に5営業所を持ち、年商は100億の機械部品や制作機械の商社のA社です。社員は営業を中心に約70名の規模です。卸店と言う呼び名の方がなじみがあるかもしれません。
先代が会社を立ち上げ、今の規模にまで会社を大きくしていきました。先代のころは日本の高度経済成長期でもあり、製造業が大きく飛躍していった時期であり、この波に乗ってA社も成長していきました。
ところが、21世紀に入り日本は失われた30年と呼ばれ、低成長を続けています。その中にあってA社も苦戦をしいられている。
その中でも、一番最後に出した大阪営業所の業績不振が続いている。取引している会社の業績もあるが、後発ということもあり、ライバル会社との競争で負けていることも不振の原因になっていた。
ライバル会社との競争に負ける要因の一つに、営業所長の入れ替わりの速さも関係している。目標の業績数字が達成できないことからの社長からのプレッシャーに耐えられず会社を辞めるか、自ら降格を申し出ることが頻発する。
興味深いことに、社長は、プレッシャーをかけているつもりが全くないことです。社長は、商工会議所や業界団体などにも出席し、役員なども務めている。それだけではなく、経営を学ぶ経営塾でも学び続けていて、自己啓発セミナーなどでも学んでいる。
それゆえに、仕事とその人の人格を分けて、仕事には厳しく、人は尊重する姿勢を社員はもちろん、他社の関係者や関係するあらゆる人に示している。
学び続け、学んだことを実践することを心掛けているため、他社の社長や社員からは尊敬され、経営や人のマネージメントのアドバイスを求められるような存在にもなっている。
ところが、社員は尊敬もあるかもしれないが、それ以上のプレッシャーを感じ、会社を辞める選択をするのです。
大切に思うほどに感情が噴き出す
実はA社の事例は、特別な事例ではありません。他の多くの会社で起きている事例です。どうしてこんな状況が起きてしまうのでしょう?
それは、自社の社員に向き合う姿勢と他社の人に向き合う姿勢が違っているのです。他社の人に冷静で客観的な立場で話が出来ています。
ところが、自社の社員には、冷静さを失い、客観的にはなっていないのです。それを本人が気づいていないか、または気づいていてもつい感情的になってしまう。
これは、人としての特性です。でもそこに気づかず、一生懸命な社長は学び続ける、そうして外向けの顔と内へ向けての顔が出来上がる。
しまつが悪いのは、そうなってしまうと外部の人でその社長を正す人がいなくなるのです。なにしろ、外では人格者で、内向きでも普段は人格者でいられるのですから。ただ、特定の状況になると感情が表に出てしまう。
A社の事例で言うならば、業績不振が続き、社員の姿勢が積極的でなくなり、言い訳が出てきたりすると、途端に感情が表に出てきてしまう。
A社の社長の場合は業績不振と怒りや不安の感情が噴出し、冷静でいられなくなる。この感情が噴き出すきっかけは人によって違うが、人が必ず持ち合わせるものです。
その人の能力に関係なく、噴出してしまう感情、これが自分に近くて、大切な人ほど強い感情が噴出し、コントロールが効かなくなる。
そこのところを間違えて、感情をコントロールできなくなったことが、学びが足りないとなって、さらに学び続けるのですが、的外れです。
コントロール不能の感情の存在を知る
では、どうすればよいのかですが、
感情が噴き出すきっかけ(トリガーと呼ぶ)を見つけなければならないのと、そのトリガーによって感情が噴出したときにどう対応するかを準備しておく必要があるのです。
その前に、経営者は抑えられない感情が問題を引き起こしている現実を受け入れ、そういう感情を見つける姿勢が必要になります。
そして、そのトリガーは一つではないことも多いという事も知って、会社の社員に向き合っていくことが求められるのです。
そして、どうすればよいのか?
常にトリガーによって発動する自分自身の感情に向き合っていく場をつくることです。その感情は悪い結果を生むとは限りません。良い結果を生むことも多いのです。
だから、
その感情が悪い結果を生んでいることに気づきづらくなっているのかもしれません。
その向き合う方法は、たくさんあります。
ある経営者は定期的に禅寺で座禅を組む、ある経営者は一人で山籠もりをする・・・
自分の感情に気づいている経営者は何らかの対応方法を実践しています。
コンサルタント、コーチ、メンターの使い方が違うのです
だから、成功すると言えるのです。
そして、米国西海岸のシリコンバレーの企業では、コーチやメンターをつけるのが常識になっています。
また、コンサルタントを入れて、戦略や社内の仕組みの変更を行っています。それは、何も知識や経験不足から専門家に頼るという事ではないのです。
自分自身の感情や盲点の存在を十分承知しているから、外部の目をいれるのです。人の特性を知っているから、客観的な第三者の力を借りるのです。
経営者が学んでも成果がでないというのは、根本的にここのところの理解が足りないのです。感情や盲点も学びによって克服できると思っているかのようです。
学びは、人の本質を知り、成果を出すために、自分や社員でできることと、他力を使って、自分や自社の状況を診断することを使い分けることを学ぶのです。
ところが、多くの場合、自力で取り組むことと、他力を使うことが逆になっていたりするのです。つまり、経営の意思決定を指導を仰ぐコンサルタントや経営の師匠と呼ばれる人にゆだねてしまう。
そして、本来、第三者の目を入れなければならない、現実の感情の揺れや盲点の検証を自力でやろうとする。あるいは、第三者を入れるのを拒む。
コンサルタントやコーチ、メンターの使い方が逆になっている。低成長市場の中で、自社の強みを引き出すか、あらたな市場を開拓していかなければならない能力を第三者にゆだねる。
そして、自分を見つめ、自社の検証を行う場合の感情の影響力や盲点を無視していては、仮に一時成功したとしても長くは続かない。自立できない経営者、会社と言わざる負えない。
逆にしましょう!そうれば、組織力がみるみる上がってきます。新たな市場機会の創出、既存市場での戦略創造の能力は直ぐに上がってきます。
そして、経営者自身の感情に自らが向き合い、自社の盲点に気づいていけば、社員は活気づき、組織力が高まり、魅力的な会社になります。そうなると、人材不足中でも、優秀な人材が集まってきます。
好循環が生まれるのです。今までの方法では悪循環のまま低成長市場をさ迷うことになるのは明らかです。
低成長市場からの脱出はコンサルタント、コーチ、メンターの使い方を改めるところから始まります。
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