低成長市場で成長するための大原則 ~ビジョナリーカンパニー③から読み解く~

低成長市場にいて、所属する業界そのものの成長が鈍化している。日本の多くの企業が実は、このような状況に置かれているのかもしれない。

だからといって、「そんな市場環境なんだから、うちの会社も成長しなくても仕方がないな・・・」などと少しぐらいは思うことはあったとしても、会社の成長を止めるわけにはいかないと思うのが社長や経営幹部ではないだろうか。

そんな皆さんに参考になるのが、ビジョナリーカンパニーシリーズだろう。特にビジョナリーカンパニー③衰退の五段階には、低成長市場にいる企業にとっては、低成長にいるからこそ陥るワナや低成長市場にあっても成長を実現するヒントが示されている。

そこで、私の解釈で、これらのヒントを抽出してみた。

傲慢さの排除

ジム・コリンズは企業の衰退は、成功を実感している時から既に始まっていると言う。「成功から生まれる傲慢」である。ビジネスに限らず、誰でも、成功を実感した時には、しばし、その成功に酔いしれる経験をしていると思う。

それが悪いと言うことではない、そこから生まれてくる“傲慢さ”が後に悪い影響を及ぼすと言う。そして、勘違いしてはいけないのが“傲慢さ”の意味である。

ここで言っている“傲慢さ”をポジティブな言い方をしてみよう。

成功体験から、次のさらに大きな成功を目指す、意欲と自信。自信から生まれる積極性。自信から生まれる俺についてこい的な強いリーダーシップ。

これらは、成功を積み重ねるにつれ大きくなる。しかし、これらは裏を返せば、全てが傲慢につながる。意欲も自身も積極性も、そして強いリーダーシップも視点を変えれば“傲慢”になる。

意欲、自信そして積極性などの経営者にとって重要な姿勢が“傲慢”になるのは、そこに客観的データが不足しているからである。例え、成功したとしても、その経営判断が経営者の直感や思い込みから生まれているのであれば、“傲慢”と言わざるおえない。

データをもとに判断してく姿勢が“傲慢”を排除することにつながる。しかし、今の情報化社会においては情報が氾濫しているし、あれもこれも必要だと考えだすときりが無くなり、「優柔不断で決定が出来ない」と言われかねない。

では、どのようなデータを持つ必要があるのか?それをジム・コリンズは「What(何)からWhy(なぜ)への以降」という表現をしている。

Why(なぜ)顧客は数ある会社の中で我社を選んでくれているのか?

Why(なぜ)顧客は我社の商品・サービスを選んでくれているのか?

Why(なぜ)顧客は我社の商品・サービスで満足しているのか?

Why(なぜ)我社は存在しているのか?

このWhy(なぜ)の答となるデータをとることで、経営判断はより成果を生み“傲慢”は排除される。

でも、これらのデータをどのようにして取ればよいのか分からないという方もいると思うが、Why(なぜ)我社は存在しているのか?以外は必ず取れる。

そして、これらは常に念頭に置き、時代の変化と共に更新させていく必要がある。それが次に大切な“規律”へとつながる

規律ある行動

ジム・コリンズは“規律ある行動”が企業を偉大にすると言うが、これはどうすれば出来るのだろうか?

その前に“規律ある行動”について誤解しないようにしたい。ここで言っている“規律”とは、上司の指示に部下は服従し、忠実に行動せよというように単純に捉えてしまうと方向を間違える。

“規律”がルールであることに違いはないが、そのルールがどこから生まれてくるかが大切である。経営者、上司の個人的なものから来ていれば、それは“傲慢”である。

“規律”というと軍隊をイメージするかもしれないが、軍隊はWhy(なぜ)存在するのかと言えば、国民の安全を守る為、しいては平和を維持し、安心な世界に貢献している言える。その為に“規律”が存在する。

つまり、Why(なぜ)に対しての答えを実現する為に“規律ある行動”をとる必要性が出てくるのである。

企業の拡張、組織作り、商品開発、など企業活動全てがWhy(なぜ)を実現する方向に向かって一貫性を持って行動していく事が“規律ある行動”になっていく。故に、その実現に向けた目標は必達であるべきものである。

「少し高めの目標が人や組織を成長させる」と言われるが、この言葉は甘いと言わざる負えない。ここに必達と加える必要がある。高い目標でチャレンジングだから、たとえ未達でも良いという考えが起きるならばその考えを排除させる必要がある。

なぜならば、目標ありきではない。Why(なぜ)に応えていく為の目標であり、その達成は、会社そしてそこに働く社員全員の存在を示すことにつながるからである。

今、低成長市場にいる企業はこの“規律ある行動”を今一度見直すことで、成長の階段を上ることが継続的に可能になる。そして、この“規律”が次のリスクと問題の捉え方に影響していく

リスクと問題の正しい理解

リスクを取れ!リスクを取らなければ大きなことは出来ない、前に進めない。などとリスクを取る事がビジネスを成功に導くという声が多く聞こえる。

しかし、ジム・コリンズは偉大なリーダーはリスクを取らないと言う。仮に成功した時の成果が会社を何倍にも大きくするようなものであったとしても、それが、思い通りに進まなかった場合の損害が会社を危機に陥れるようなリスクは絶対に取らない。

リスクの考え方は、「リスクは取らない」としたいが、多くの失敗は、リスクが見えず、成功した時のイメージだけで物事を進めてしまい、会社に大きな危機をもたらしてしまう。

なので、リスクの考え方は、どんなことにもリスクがある。リスクが見えないということは何らかの情報が欠落している。リスクが見えて、その対処方法が明確になるまで進めない。さらに、あらゆることでリスクを最小限にして、物事を進める。

では、何もチャレンジしないのか!と言うことではない。リスクをしっかりと客観的に捉え、それを最小限にすることを怠らず、チャレンジするのである。一か八かの博打をするのではなく、確実に勝つチャレンジをする。仮に負けてもその被害を最小限にして、次のチャレンジの機会を作っていくことが、リスクの捉え方である。

そして、問題とは、リスクを抑えることをしないことが問題である。リスクを抑えて勝負し、仮に負けても、次の勝負に勝つためのデータがそろう。勝負で負けてしまって、次の勝負ができなければそこで終わってしまう。経営者が絶対避けなければならないことである。

さらに、「時間軸リスク」ということをジム・コリンズは示している。今、目の前に迫っている危機に関しては、直ぐに対処するが、時間軸が長いリスクへの対処を伝えている。

まさに、低成長市場にいる企業はこの時間軸リスクに対処しなければならない。まだ、会社は収益も出て、余裕があるが、でも将来は暗い。どうするのか?「手をこまねいて放置」。そうだとすれば、この放置が最も大きな問題である。

「明日にも最高の結果が欲しい」となると、打ち手が無くなるかもしれない。しかし、時間はまだある。時間軸を長く取って、少しずつ前進する。小さな弾丸を少しずつ撃ち、的を絞っていく。

でも、その為には、やはりWhy(なぜ)が重要なポイントになってくる。これが無ければ、どの方向に的を絞ってくか見当もつかない。唯一あるのは業績の回復になってしまう。そうなれば、いくつ先は、新規ビジネスになるのだろうか?

ジム・コリンズが言う、「一発逆転の追求」になってしまう。新規ビジネスが悪いといっているのではない。一発逆転というものはビジネスの世界には無いと言うことを言っている。新規ビジネスにしても大きな成果を得るには、準備と多くの失敗の連続によって得られる。ただ、やみくもにやれば成功するというものではない。

その新規ビジネスの成功の鍵もWhy(なぜ)に答えていくことになる。

まとめると、低成長市場で成長を継続させていく為には、

  1. Why(なぜ)に答えて、それを明確にしていく
  2. それに応えていく為に“規律”と一貫性を持って行動する
  3. リスクは全てに存在する。行動しないこともリスクになる。そのうえで、リスクを最小限にしてチャレンジする
  4. 一発逆転は存在しないことを理解する

低成長の市場に在っては、企業は苦しい戦いを強いられていると思う。そこで、一発逆転を狙いたい気持ちもあるが、ビジネスに、一発逆転はないとするならば、我々が取るべき道は、初心に戻って、王道の成功法則に沿った活動になる。

低成長にいるから、この法則に沿うか、目の前の出来事に一喜一憂するかで、近い将来に大きな差を生むと確信する。

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