答えのない難問にどう立ち向かう!

「答えがない難問と困難に、きみはどう立ち向かうか」

ベン・ホロウィッツ著 HARD THINGSの紹介と解釈を独断と偏見で書きたいと思います。

この本は、ベン・ホロウィッツ氏が、ITベンチャーを創業し、幾多の困難に立ち向かいながら最終的にはヒューレット・パッカード(HP)に16億ドルで売却することができた、いわゆるヒーローズジャーニーの物語です。

「そうか、おきまりの成功者の物語か」と、簡単に片づけられない物語がここにはあります。本人が体験したからこそ語れる心情、行動そして葛藤が描かれています。

そもそもベンチャー企業を立ち上げる為には、創業者のアイディアはもちろん、それに賛同する投資家が存在します。

つまり、創業者だけではなく、賛同する優秀な社員、投資家の全員が、大成功を確信するからスタートできます。

ベン・ホロウィッツ氏が創業した、ラウドクラウド社も他社に無い、ユニークな製品、サービスを市場に投入し、意気揚々とスタートしました。

ところが、創業まもなく、ITバブルの崩壊そして9.11のテロがシリコンバレーのIT市場を一気に不況へと落とし込みました。

当然、ラウドクラウド社も巻き込まれ、倒産の危機に追い込まれます。自分が招いたわけでもない、どうしようもない外部環境の変化に巻き込まれ、危機に追い込まれることはあると思いますが、この時に経営者、リーダーはこの困難にどう立ち向かうがその先の未来を決めていくと思います。

この答えがない難問と困難にどう立ち向かうかのメッセージがこの本の中にはあります。

まず一つ目は、「クソを食らわば一口で」です。

悪い情報はいずれは知られるので、一気にすべてを知らせる。ここで情報を小出しにするメリットよりも、デメリットの方が大きいということです。

まして、隠すこともできません。隠せば、現実が遠くに去っていくことは決してありません。

冷静に考えれば、当たり前なことのように思いますが、なかなかできないことかもしれません。しかし、ここに成功要因の一つがあると思います。

この当たり前を実行するために要素が二つ目のメッセージです。

1人で抱え込まない、誰かに相談することがあげられます。相談するということは、もちろん経営者、リーダーが気づかない対策のアイディアもありますが、

一番大切なことは、経営者、リーダーが冷静に客観的になることです。先ほどの悪い情報はいずれは知れるということは、誰もが分かっていることです。既に、知っていることです。

誰かに聞いたり、本で学んだりしたこともあるかもしれませんが、最善の方法だと分かっていることを実行するためにも、誰かに相談することが大切です。もちろん誰でも良いということは無く、日ごろからコーチやメンターを持つことが必要になります。このコーチ、メンターを持っていることがシリコン・バレーの企業の強さかもしれません。

また、三つめは、社員を尊重するです。

情報を隠すということは、社員を信頼してないからでありませんか、それが余計な心配をかけてはいけないという善意からだとしても、信頼が無いから情報を隠すのだと思います。

そうすると、隠された社員の方も、経営者、リーダーを信頼しません。情報を知らせることは、信頼を得る必要条件になります。

経営者、リーダーの中には、余計な情報は社員に伝えると、外に情報が漏れたり、反発したりなどと、ネガティブな反応を恐れる方々がいます。

それは、社員との信頼関係ができていないことの証明のように思います。また、社員からの反発を恐れるよりも、そこに正面から向き合うことが、社員からの信頼を得て、組織を強くする重要な要素であると思います。

そして、情報を開示することで、経営者、リーダーが一人で対策を考えるのではなく、社員の頭脳、経験も使え、問題解決に繋がります。

また、社員を尊重するということは、ヴィジョンを伝えたり、社員の評価にも大切な要素です。この本の中では、何度か社員をレイオフ(解雇)しています。

会社の業績悪化による、製品戦略の転換によるレイオフもあれば、社員の業績不振による配置転換やレイオフもあります。

そんな場合も、解雇の理由を、本人の人間性を尊重(気づつけない)し、能力や経験の違いをしっかりと伝える。そして製品戦略の転換などによる大規模なレイオフ等の場合などは特に、会社に残って一緒に働く社員に対して、今後のビジョンや目標をしっかり伝えて、安心して働く環境をつくることも大事です。

さらに、この本の中では、経営においての優先順位を、社員(人)、製品・サービス、利益の順番だと明確に示しています。

かつて、稲盛氏はJAL再生の時に掲げた理念は、「全従業員の物心両面の幸福を追求し、お客様に最高のサービスを提供する」でした。

顧客満足第一をかかげる企業も多いですが、顧客満足を届けるのは社員です。社員が幸せであってこそ、最高の顧客満足を提供できるという考え方は、世界中の共通した組織づくりの成功ノウハウかもしれません。

そして、四つ目は社員教育です。

この本の中では、社員教育をする理由として、生産性向上、業績を高める、品質向上そして社員をつなぎとめる、これら4つがあげられています。

最初の3つは、社員教育の理由として当然だと思う方が多いと思います。しかし、この最初の3つを行うことで、社員は成長します。会社に入社することによって、経験を積み、学び、それまで無かった能力も身についていきます。

このような成長を実感することで、人はその組織への帰属意識が高まります。つまり会社を簡単には止めないことになるということになります。

つまり、「成長したら、もっと条件の良い会社に転職してしまう」ということは考えず、社員の成長を促進させることを大切にするということです。

もちろん、中には、もっと良い条件の良い会社に転職しようと思う社員もいますが、それは一部であり、転職理由は、人間関係であったり、望む仕事が無かったりなどといった、他にあるということです。

以上の4つの他にも、経営者、リーダーとしての考え方も示されています。その中でも大切なことは、「そもそも、自分は何をしたいのか」を明確にもつことです。

本の中では、倒産の危機に向き合ったときに、「起こりうる最悪な状態とは、どんな状態なのか?」「もし倒産したら私は何をするのか?」という問いを自分自身に投げかけています。

何かを守ろうとした時に、人は意識が「守る」ことに向き、そもそも、何を守り、なぜ守る必要があるかなどと言った、本質的なことが抜け落ちることがあります。

それを、最悪なことが起きたと仮定することで、今、向いている意識を拡げてみることを示しているように思います。

以上、HARD THINGSを独断と偏見で紹介し、解説してみました。

どうしてよいか解決の道が見えない、困難においても、考える道はあるように思います。その道程のなかで、最良の解決策が見つかると思います。

例え、その解決策で思い通りの成果が得られなかったとしても、考える道を外して進むのではなく、最善の道を歩むことの大切さを教えてくれている名著だと思います。

これからは、誰も経験してこなかった社会の中で、経営をし、組織づくりが必要になってきます。その中で、結果に心を奪われるのではなく、行動を起こす、最善の道を歩むことが、最も大切なことだと思います。

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