最近、色鮮やかなリング状のバッジをつけている人を見かけたり、何かと耳にするようになったSDGsですが、これって私たちにどんな関係があるんだろう?
なんて思っていたりしませんか?そこで今回はSDGsが私たち中小企業にとってどんな影響があるのかを書いていきたいと思います。内容は次のようになります。気になるところからお読みください。
- SDGsとは何のことに簡単にお答えします
- SDGsが伝えている重要な4つのメッセージ
- SDGsに取り組むメリットと取り組まないでメリット
- SDGsに取り組むプロセス
1.SDGsとは何のことに簡単にお答えします
SDGsとはSustainable Development Goalsの略で持続可能な開発目標と訳されています。2015年9月に国連で採択され、196か国が署名しています。もちろん日本もその中に入っています。
2030年までに達成すべき持続可能な開発目標が17個示されているのですが、17個の中身は多様で、貧困問題、環境問題などから経済の発展の有り方、男女差別や貧富の差などといった世界中の人々が関係する内容が含まれています。
もっと言うと、この17の目標を達成していかないと、2030年以降世界が崩壊に向かうと言う危機感から国連が定めたものです。
そんな世界が崩壊するなんてありえない!なんて思う方もいるかもしれません。でも今、日本で起きていることを思い返してみてください。
台風が年々大型化していると感じませんか。最近春や秋が短いななんて思わないですか。お隣の中国からPM2.5が日本に飛来して健康被害が気になることはありませんか。そんな気候の話だけではなく、ここ30年以上、給料があまり上がっていないと思わないですか。
そして、町を歩くと、日本語以外の国の言葉が当たり前のように聞こえてこないですか。ちょっと思い返すだけで、私たちの周辺では昔とは違う変化が起きています。環境の変化、経済の変化、外国との関係性の変化。
SDGsはこれらのことをふまえながら、問題解決の目標を示していると言えます。ただ、ここで言いたいことは、他人事ではなく自分事としてSDGsを捉えていくことが必要だということで、SDGsの内容を詳しく説明することではなく、企業のリーダーとしてどう捉え、活かしていくかを示したいので、詳しく知りたい方は、下記の外務省のサイトをご覧ください
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
2.SDGsが伝えている重要な4つのメッセージ
SDGsの詳細は他の紙面にゆずるとして、ここでは4つの重要なメッセージについて示していきます。
まず一つ目は、誰も取り残さない
日本の中では、「自分さえよければ他がどうなっても知らないよ」なんて言う人はいないと思います(たぶん?)
でもね、あえて「自分さえよければ他なんてどうでもいい」とは言わなくても、結果的にそうなってしまうことが多くありませんか?
そして、これが個人から組織、地域社会、一つの国、さらには世界規模のグローバルでみていくと、知らず知らずのうちに自分さえよければ他はどうなっても良いという事象が多く起きていても気づかなかったりするのです。
例えば、皆さんの隣の家で餓死寸前の人がいたら、皆さんはきっと何か手を差し伸べて助けようとします。でも、どこか遠い国で飢餓に苦しむ人が8億2千万人(国連報告)いると知っても、何か行動にうつすことは無いかもしれません。
SDGsは自分から遠いところで起きていることであっても、取り残さず解決していこうとうったえています。
二つ目は、トレードオフからの脱却です
中国の経済発展は目覚ましいものがあります。でも一方でPM2.5で代表だれるように、環境汚染の影響は日本にも影響を及ぼしています。
それは中国が悪い!と言い切れるものは無いと思うのですが、皆さんはどう思われますか。かつて日本においても、光化学スモッグに海や川のヘドロなどの環境汚染が進み、四日市ぜんそくや水俣病などの病気を生んだ過去があります。
現在における日本でも、まだ環境破壊は止まってはいません。放射能の問題やマイクロプラスティックの問題など、まだまだ環境破壊は続いているのです。
それじゃ、環境を優先させれば良いというのも簡単には言えません。中国の場合だと、「先進国は既に豊かになっているから、勝手なことを言える」なんて言い返されてしまいます。
なので、SDGsはこの経済発展と環境問題に代表されるような、誰かが勝てば、誰かが負ける。何かを優先させれば、何かが犠牲になるという「トレードオフ」を脱却しなければならないとうったえています。
三つ目のメッセージは持続可能であることです
SDGsをCSR(Corporate Social Responsibility)企業の社会的責任と勘違いされている方も多いと思います。CSRの根底にある思想からすれば、同じと考えても良いかもしれません。ただ、多くの方は違った捉え方をしているように思います。
その理由は持続可能の中にあります。CSRも企業が利益を出している限り続けられると思います。でも利益が出ず、まして赤字が続くような状況では削除されかねない項目になります。社会貢献に資金や労力を使う余裕は無いということになるわけです。
みなさんは、企業に利益が出ず、赤字の場合にはどういう行動を取りますか?戦略を見直し、ビジネスの立て直しをすると思います。決してビジネスそのものを止めることは無いと思います(最近は会社をたたむことを考える方も増えてきましたが、この点に関してはまた別に示したいと思います。)
持続可能のメッセージは、SDGsを企業戦略の根幹に置き、SDGsを進めることとビジネスを進めることを同じにすることを伝えています。なので、戦略を変更してもSDGsはその根幹に残り、持続していきます。そして企業はSDGsを通して成長する仕組みの中でビジネスを進めることが求められているのです。
四つ目のメッセージはこれまでと違うやり方ですすめるです
これまでの三つのメッセージを見て、みなさんはどう感じましたか?おそらく「言ってることは分かるけれど、どうやって実践すればいいんだ」という感想を持ったのではないでしょうか?
当然です。これまでと同じ思考、やり方でSDGsを捉えると、実行の方法は見えてこないのです。実はこれが、日本の企業でSDGsがすすまない理由と考えています。
これまでと違うやり方でSDGsはすすめないとただの社会貢献活動になってしまい、大手では出来るけれど、中小企業では大きなことはできないなと考えてしまいます。そして、この四つ目のメッセージの実現がSDGsを成功させる大きなカギになります。
ここまでSDGsが伝える四つのメッセージを示してきました。でもまだ中小企業にとってその意義は分かりづらいと思います。なので次に、SDGsに取り組むメリットと取り組まないでメリットについて示していきます。
3.SDGsに取り組むメリットと取り組まないでメリット
世界経済フォーラム(通称ダボス会議)は2017年の年次総会でのレポートによると、SDGsは少なくとも12兆ドル(100円換算で1200兆円)の新規市場と3億8000万人の雇用が創出されると示しています。
このダボス会議のレポートで注目する点が二つあります。
一つ目は、大きなビジネスチャンスがここにあるということです。二つ目は逆に、新規で1200兆円の市場が新たに創出されるということは、無くなる市場もあるということです。
大きなビジネスチャンスを手に入れる為に動く
日本経済の実質成長率は、この30年以上横ばい状態が続いています。以前は失われた20年と10年ほど前はマスコミでも問題視されていましたが、成長なしが当たり前になったのか最近は、失われた30年と言う言葉が出てきてませんね、ほっとくと失われた40年に近づこうとしているのに。
このもうすぐ40年にもなろうとする低成長の日本経済の中でも、成長を続ける企業は当然存在しています。過去最高益を出した○○会社、なんて発表されている会社を見かけます。
でもその裏では、売上は対前年並み、ほんの少し前年を上回った。そんな会社はまだ良い方で、前年を下回った、赤字寸前でとどまった、いやいや赤字になってしまった。なんて会社が多いから、日本全体で見た経済成長が横ばいを続けているのでありませんか。
みなさんの会社の売上、利益は順調ですか?順調と言う言葉はあいまいですね。言い方を変えると、社員のベースアップが出来て、ボーナスも出せ、設備投資や未来への投資も十分出来るぐらいの利益が毎年出せていますか?
うちの会社は、十分な利益が出せていないという経営者、リーダーの方々は、一度振り返って考えってみてください。
過去、どんな手を打ってきましたか?その打ち手は、これまでのやり方とどれくらい違っていましたか?
40年近くも成長が無いということは、SDGsの四つ目のメッセージを思い出してください。「これまでと違うやり方ですすめる」が企業活動で必須になっていることを示しています。
ただ、どう違う方法でやるのかが分からなかったのが現状でした。分からないのが当然です。誰もその視点をどうすれば良いかを示してこなかったのですから。
でも、SDGsがビジネスの方向性を示してくれました。17の開発目標が実現されている、それを自社が貢献している世界から現実を見ると、解決すべき課題がわんさか出てきます。
その課題解決をビジネスに転換することで、新たな成長ビジネスが生まれます。自社だけで難しい案件もあるでしょう。ここも「これまでと違うやり方」の中に入ります。他社とのコラボレーションを考えましょう。
これまでと違う視点、思考が必要です。今のままではビジネス成長しないということは分かっているはずです。そしてSDGsも求めています。
では、SDGsに取り組まなかった時のリスクにはどんなものがあるのか
デフレや低成長に苦しんでいるのは日本だけではありません。ヨーロッパの国々も結構苦しんでいます。そんなヨーロッパの国々の企業はいち早くSDGsに取り組み始めました。代表的なのは、イギリスとオランダに本拠を置くユニリーバですね。
他にも企業の規模を問わず、続々とSDGsにそったビジネスを立ち上げてきています。そんな企業がみなさんのライバルだったらどういう状況になるでしょうか?
後手に回って先に市場を取られてしまうことを許しますか?経営者としてそんなこと許せませんよね!
さらに2006年には、環境や社会貢献、ガバナンスへの取り組みを積極的に行う企業への投資を推奨する、責任投資原則が国連から金融機関へ提唱され、その延長で2019年には国連責任銀行原則が提唱されました。
これには、世界中の多くの金融機関、銀行が署名しています。つまり、国連がリーダーシップをとり機関投資家や銀行にESG(Environment Social Governance:環境、社会、ガバナンス)がしっかりしている企業への投資を呼びかけたことになります。
そして、2011年にはハーバード大学のマイケル・ポーター教授は、これからの企業戦略はCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)、つまり経済成長と社会貢献を一致させた戦略が必要だと提唱しました。
このCSVの方向はSDGsの方向と一致しています。
これら国連の投資への考え方の提唱、経営学教授のCSVの重要性そしてSDGsの達成への世界の動きを見ていけば、SDGsへの取り組みをしないことは将来への大きなリスクになると言えます。
これまで示してきたことで、SDGsへの戦略的取り組みは大きなビジネスチャンスを生み、一方で取り組まないことは未来にリスクを生むことになることが明らかです。それでも、取り組みに躊躇するのが多くの企業なんです。
それは、どうやって取り組むかが分からないからかもしれません。そこでこれからSDGsへの取り組みかたについて示していきたいと思います。
4.SDGsへの取り組みは次のステップですすめていきます
- まずはSDGsの開発目標が達成しているヴィジョンを描きましょう
このヴィジョンを描くときに大切なのは、みなさんの会社が出来ることを考えに入れないことです(ここ重要です)。
会社に出来ることを先に考えてしまうと、すごく小さなものになり、SDGsはうちには関係ないと逆戻りになってしまうかもしれません。
地域社会、日本、世界を視野にいれて、5年後、10年後のヴィジョンを描いてみましょう。リアルに描きます、見える世界、聞こえる声、感じるものを描きましょう。
- そのヴィジョンが達成している世界からあらためて現実を観る
そのヴィジョンが達成できるいる、状況をイメージして、その世界からあらためて現実社会を観察します。
そこには、様々な矛盾や出来ていないことが浮かび上がってくることでしょう。それが、ヴィジョンと現実とのギャップになってきます。
- その中のギャップで、自社のリソースで解決できそうなギャップを選択します。自社のリソースでは見つからないと言うならば、一番近いギャップを選択します
そのギャップを埋めて、解決していくことがビジネスへの道になってきます。その解決に向けて、自社のリソースはどんなリソースが使えるのかを検討します。
自社のリソースでは難しい場合が当然出てきます。どんなリソースが加われば実現できるでしょうか、そのリソースを探しましょう
他社にあるかもしれません、ひょっとすると自社の中に埋もれているかもしれません。
- そして、市場の検証やビジネスモデルの検証を行いながら、ビジネスを立ち上げていきます
ここからは、通常のビジネスと同じです。市場を検証し、マーケティングプロモーションを計画し実践していきます。もちろん、あらたなチーム編成も必要かもしれません。
ざくっと、プロセスを書き出してみました。気づかれた方もいると思いますが、新規ビジネスをゼロから立ち上げる同じプロセスです。
SDGsに向かった新規ビジネスを立ち上げるプロセスを進むだけです。多くの人の笑顔が待っているビジネス、大きな市場が待っているビジネスです。
さあ、みなさん待っている時間はありません。今からSDGsに向かってビジネスを再構築していきましょう
スタービジネス創造支援センター
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