なぜ、挑戦を避けるのか?~今のままで良いとは思わないけれど~

「別に安定を望んでいるわけではない」「できることをやってるだけ」「現実的に考えているだけだよ」
高い目標や新しい挑戦について話すと、こうした言葉を返してくる人がいます。

自分が挑戦しない理由を「現実的」という言葉で正当化しているように見えますが、その裏側にどんな心理があるのでしょうか。


実は、こうした人ほど「変わらないこと」に強くしがみついていることが少なくありません。表面的には「合理的な判断」のように見えても、深層では“リスクを避けたい“失敗したくない”“今の自分を壊したくない”という無意識の防衛本能が働いているのです。


今回は、「変化は必要なことだ、安定を望んではない」と言いながら、高い目標を避け、現実的な目標に向かい行動している人に向けて記事を書きたいと思います。
あなたは、変化を避けているのではありませんか?

安定は、安心ではなく「選ばない理由」の仮面

まず明確にしておきたいのは、「安定」そのものが悪いわけではありません。誰もが人生の中で、安定を求める局面があるのは自然なことです。家族を支えるため、生活を守るため、自分の心身を保つため、一定の安定を求めるのは当然です。


しかし問題は、「安定だから」という理由で、選択の余地を自ら狭めてしまっている場合です。
たとえば本当は、もっと違う働き方をしてみたい、新しい役割にチャレンジしてみたいという気持ちがあるにもかかわらず、「それは今の自分には無理だ」と現状を固定してしまう。

そうすると、「できることしかやらない」「現実的な判断しかできない」自分が出来上がっていきます。
この時、「現実的」という言葉はとても便利です。自分の可能性にフタをしてしまうことを、堂々と正当化してくれるからです。

「現実的」という言葉に隠れた真の課題

では、「現実的に考えているだけ」という人の心の中に、どんな課題が隠れているのでしょうか?よく見られるのは、以下のような心理的パターンです。


① 失敗への恐れ
「できることだけをやる」の裏には、「失敗したくない」「恥をかきたくない」という感情が隠れています。自分の価値や評価が下がるのが怖いのです。


② 自己効力感の低さ
「どうせ自分には無理だ」という思い込みから、可能性を最初から切り捨ててしまうケースもあります。これは過去の経験や環境によって、自信が育まれてこなかった人に多く見られます。


③ 安心できる領域にとどまりたい欲求
人は習慣化された場所、関係性、思考に安心を感じます。たとえそれが不満のある状況であっても、未知よりも“知っている苦労”を選んでしまう傾向があります。


④ 周囲との比較・評価の恐れ
高い目標を掲げると、他人と比べられる機会も増えます。それを避けるために、「目立たず」「波風立てず」生きる道を選びます。
つまり、「現実的にやっている」というのは、「本当はやってみたいけど、怖くて動けない」ことを認めたくない自分への言い訳でもあるのです。

見えない損失に気づけるか

「無理をしないでできる範囲でやっている」――それ自体は悪いことではありません。しかし、そこに“本当は挑戦したい気持ち”が眠っているなら、大切なのは、見えない損失に気づくことです。


たとえば、あるAさんの事例があります。Aさんは大学の4年間スキー競技部のエースとして活躍していました。しかし、優勝という目標を掲げることは無く、8位以内の入賞を目標にしていました。

そして、優勝を目指し、結果としてAさんよりも下位の結果になる選手をバカにしていました。そしてAさんは社会人になっても、決して高い目標を掲げることは無く、確実に達成できる目標しか考えていませんでした。


ところが、社会人になり、久々にスキー競技部の同窓会に出席した時、高い目標を掲げながら、自分よりも下位の戦績しか出せなかった選手が、社会人になり、Aさんをはるかに超える役割につき、確実に成果を出しているという結果を見せつけられることになる。


このように、チャレンジしなかったことが、いつの間にか、他の人に追い越されてしまっている。これが、チャレンジを避けることによる「見えないコスト」なのです。つまりは、「未来にツケを残す」とうことです。

不安を「課題」に変える思考

では、どうすれば恐れや不安に向き合い、行動に踏み出すことができるのでしょうか?
答えはシンプルです。不安を言語化し、課題に変換することです。


たとえば、
• 「失敗したらどうしよう」→ どんな失敗があり得るのか?誰にどんな影響が出るのか?
• 「迷惑がかかるかも」→ その迷惑はどのレベルで、どう対応すれば最小限に抑えられるか?
• 「自信がない」→ 何に対して自信がなく、何があれば前に進めるか?


不安とは、漠然とした「感情」ですが、課題とは「対処できる対象」です。不安をそのまま放置するのではなく、“言葉”にすることで、自分の中で具体的な行動や準備につなげられるのです。

小さな一歩が現実を変える

高い目標を語ると、「そんなの理想論だ」「無理に決まってる」と感じる人がいます。でも、理想に向かう第一歩は、必ず「小さな行動」です。


「1日30分だけ勉強する」「まず1人に話してみる」「週に1度だけ新しい提案をしてみる」――そんな小さな一歩でも、自分の思考と行動が変わり始めます。


人は、変化の準備が整ったときに変わるのではありません。小さな一歩を踏み出すことで、自分が“変わる人間なんだ”という実感が得られ、その実感が自信に変わっていくのです。

自分は何を望んでいるのか?

「現実的にやっているだけ」と言う人にこそ、静かに問いかけてほしい言葉があります。
「もし、今の状況に“制限がなかった”としたら、何をやってみたいですか?」
「誰にも否定されず、自分のままで生きられるなら、どんな挑戦をしてみたいですか?」


この問いに、胸の奥で少しでも“ワクワク”が芽生えるなら、あなたはもうすでに、次のステージに向かう準備ができています。

まとめ:変わることは、怖い。でも…

変わることは、怖いです。特に、「変わってもし成果が出なかったら?」という不安は、誰の中にもあります。でも、それでも動ける人は、「変わらなかったら、もっと後悔する」と気づいた人です。


大きな一歩でなくても構いません。今日、この文章を読んだあとに、何かをひとつだけ変えてみる。その積み重ねが、未来のあなたの可能性を拓きます。


「本当は変わりたい」と思っている自分を、どうか置き去りにしないでください。未来のあなたが、きっと今日のあなたに感謝する日が来ます。