
「過去と他人は変えられない」とわかっていても
「過去と他人は変えられない」──これは、多くのビジネス書や自己啓発本に書かれている有名な言葉です。誰かに裏切られたとき。思い通りにいかない出来事が起きたとき。ついこの言葉を思い出して、「仕方がない、切り替えよう」と頭では分かっているはずなのに、感情がついてこない。
特にそれが、子どもやパートナーといった“本当に大切な人”とのことだったり、長年心血注いできたプロジェクト、会社の未来をかけた重大な決断の結果だったりすると、頭と心のギャップはさらに広がります。
なぜ、あんな選択をしてしまったのか。
なぜ、あの人はわかってくれなかったのか。
なぜ、あのとき止められなかったのか。
「変えられない」と分かっているはずなのに、何度も頭の中で過去のシーンを再生してしまう。気がつけば、前に進むエネルギーが過去に吸い取られてしまう。
けれど、私たちはいつまでもその場に留まるわけにはいきません。時間は待ってくれないし、私たちには創りたい未来があるからです。
では、どうすれば感情を手放し、次の一歩を踏み出せるのでしょうか。
①「すべての出来事は、自分の“思い”が引き寄せた」と知る
この問いに向き合うとき、大切なのは「起きた出来事の原因は、すべて自分の“思い”にある」と受け入れることです。
これは、罪悪感を背負うという話ではありません。自己否定でも他人否定でもなく、「思い」が現実を創っているという事実に気づくことです。
例えば、あなたが過去にある人を信じすぎて裏切られた経験があったとします。その裏切りの出来事自体は辛いものかもしれません。でも、そこには「信じたい」という、表面的なことの前に、「楽をしたい」「うまく相手を使っている」というようなエゴな“思い”があるかもしれません。その“思い”こそが、現実を引き寄せたと考えたらどうでしょうか。
これはスピリチュアルでもなんでもなく、リーダーとしての視点を持てば、ごく当たり前の話です。なぜなら、リーダーの“思い”は、言葉や表情、意思決定、行動、すべてに影響を及ぼすから。
その“思い”が周囲を動かし、やがて組織や社会に現実として反映されていくのです。
②「どんな“思い”であれば、望む未来を創れるのか?」
私たちはつい、「あのとき〇〇していれば…」と過去を悔やみがちですが、未来はいつだって「今の思い」から始まります。
「こんな会社を創りたい」
「こんな社会を残したい」
「こんな自分で在りたい」
そういう“思い”があるなら、過去にとらわれている時間はもったいない。大切なのは、「未来を創るのにふさわしい“思い”」に、今この瞬間の自分をチューニングすることです。
感情は、外からの刺激によって反応として湧き上がるもの。でも“思い”は、内からの意志で選び直せる。
怒りや悔しさに囚われたままでは、次のチャンスも同じように見失ってしまうかもしれません。でも、「未来を創るための思い」に切り替えれば、目の前の出来事の意味が変わってきます。エゴな“思い”から、本当に創りたい未来にふさわしい“思い”を身につけましょう。
③未来のビジョンに集中し、「今の思い」を磨く
ビジョンとは、未来の自分自身に向けたメッセージです。
誰かのせいにしたくなるとき、起きた出来事に囚われてしまうとき。そんなときこそ、自分が目指す未来の姿を思い出してください。
あなたの組織が成し遂げたいことは何ですか?
あなたの人生の終わりに、どんな自分でありたいですか?
次の世代に、どんな姿を見せたいですか?
そのビジョンにふさわしい“思い”とは何か。それを探すことに意識を集中させてください。怒りではなく、憎しみでもなく、誇りと希望に満ちた“思い”で、今を選び直していく。
そして、その思いから、行動を生み出していく。
未来を変えるには、行動が必要です。
行動は、思いから生まれます。
だからこそ、行動を変える前に、“思い”を変えることがすべての出発点です。
まとめ:偉大なリーダーは、“思い”の質で人生を創っている
偉大なリーダーたちは、失敗を経験しなかったわけではありません。むしろ、誰よりも深い痛みや後悔、怒りや喪失を経験している人たちです。
けれど、彼らはそこに留まりません。
なぜなら、彼らには未来を創るという“思い”があったから。
そこには、「自分さえよければ良い」というような“思い”はみじんも無い。
そしてその“思い”に、何度でも自分を立ち返らせる覚悟があったから。
過去と他人は変えられない。でも、“思い”は変えられる。
それが、未来を変える唯一の方法です。
あなたがもし今、何かに囚われているなら。
それは、あなたが真剣に向き合ってきた証です。
でも、次に進むなら、“思い”を選び直すときです。
リーダーであるあなたの“思い”が、チームを動かし、未来を創る。
そしてそれは、今この瞬間から始まります。