今回は、皆さんにビジネス書「BIG THINGS」を紹介したいと思います。著者はオックスフォード大学第一BT教授であり学科長である、ベント・フリウビヤ教授です。
BTというのは、Bayesian Thinking(ベイズ思考)の略で、確率論の一つであるベイズ統計学のことです。
つまり、著者は、このベイズ統計学をもとに様々なビッグプロジェクトを数字によって定量的に分析し、プロジェクトが陥る失敗の理由を示しています。もちろん、失敗の理由だけでなく、成功するための方法も示しています。
今回、この本を取り上げたのは、ビッグプロジェクトの失敗要因を知ることではなく、大小様々なプロジェクトに我々は日々、取り組んでいると思います。
営業活動に、開発そして採用プロセスなども一つのプロジェクトだと捉えると、日々の業務がそもそもプロジェクトだと考えられます。
この本から、我々が目標に向かって進み、成果を確実なものにする為の、メッセージを掴み取ることができます。
目次
行動計画が曖昧では、行動も曖昧
この本の重要なメッセージは、ビジョンや目標がどれだけ、ワクワクし心を躍らせても、行動が伴わなければ、失敗する。
この本の中では、オリンピックや万博そして大規模なトンネル工事など、社会的に意義があり、やりがいのあるプロジェクトを分析していますが、その結果はことごとく失敗です。
失敗の定義は、大幅な計画延長とそれに伴う大幅な予算超過、そして最悪はプロジェクトの中止です。
我々のような小さな企業においては、大幅な計画延長や予算超過などは不可能な話なので、プロジェクトの中止又は、うやむやになり、いつのまにかビジョンが忘れ去られることになります。
そして、その失敗の要因は、行動計画が不適切だという事です。国の威信をかけた国家プロジェクトにおいて、どうして行動計画が不適切になるのか、不思議ですが、それを当事者は何度も繰り返しているということです。
大きな国家プロジェクトだけではありません。日常の我々の、目標やビジョンに向けた行動も多くが失敗に終わり、その失敗を何度も繰り返します。
なぜ、行動計画が適切に設計できないのでしょうか?そして、なぜ同じ失敗を繰り返すのでしょうか?
これは、どうも人の能力ではなく、本能と言っても良い特長にあるようです。そのプロジェクトの目的、何のためにそれを実施するということが、プロジェクトの実施が決定された瞬間にどこかに消えてしまい、プロジェクトそのものが目的になってしまう。
本来の目的ではなく、行動が目的化されている
目的ではなく、プロジェクトの実行が目的化されてしまうことで、多くのブレが表出してきます。
その一つが、「まず実行在りき」です。様々なリスクの想定やその解決の為のシミュレーションなどの準備が、
「先んじれば人を制す」「チャンスを逃がすな」「やってみなければ分からん」などといった、言い訳と共に、置き去りになる。当然です、行動が目的なのですから。
そして二つ目が、プライドです。国の威信をかけている。自社の存在を知らしめる。自分の力を試すチャンスだ!などという感情と共に、経験豊富な専門家に頼ることを拒絶する。
世界で誰もやったことが無いプロジェクトだから専門家などいないということもあると思います。例えば宇宙開発などはその例かもしれないです。
しかし、そのプロジェクトのプロセスを細分化すれば、専門家は現れてきます。目的を見失わず、メンバーの行動を一致させるリーダーシップの専門家もいれば、宇宙開発であれば、ロケット工学の専門家、部品の専門家など多数存在します。
専門家の存在を知っていながらも、自国の企業を育てる。自社の人材を育てる。自分の力を伸ばすという言い訳も、行動が目的化されているから出てくることだと思います。
これら2つに、3つ目の「楽観主義」が加わります。「やれば、なんとかなる」と言わんばかりに、プロジェクトが成功することだけを考えて行動する。
プロジェクトメンバーの中には、リスクを示すメンバーもいるかもしれませんが、リーダーが筆頭に、そのリスクを否定、または無視する。
そもそも、成功するための行動が曖昧な状況では、成果がでるのは奇跡でしかない、そして偶然起きる、この奇跡的な成果が、成功事例として、これまでの3つの失敗の理由を推し進めることになる。
成功に導く3つの原則
これら3つの失敗理由をふまえて、プロジェクトを成功に導く為に重要なことは、次の3つです。
- 目的からの検証
- 専門家をパートナーにする
- リスクの想定と解決策
目的からの検証
行動が目的化するのは、人の能力の問題ではなく、本能の問題です。だとすれば、仕組みとして、目的を忘れず、目的から行動を検証することが必要になります。
プロジェクトの進捗を見る時には、必ず「目的」から検証することを日常にすることが必要かと思います。
専門家をパートナーにする
ここでも、目的が専門家の選定に重要です。オリンピックなどの国家プロジェクトの場合も目的が必ずあります。開催が目的ではないはずです。ならば、他にはないスタジアムが必要なのか?他にはない運営方法が必要なのか?などを目的から検証することからはじまります。
目的からはじまり、何が必要なのか、どんな活動が必要なのかを想定した後に、専門家の養成に入ります。
プロジェクトの内容によっては、目的の選定から専門家の参加を求めることも考えられます。しかし、専門家がいない、見つからないという場合もあると思います。その場合は、行動を進めながら、専門家の選定を同時進行で進めることが必要です。
リスクの想定と解決策
リスクを想定し、その解決策を持って行動することで、行動の内容と質のレベルを高める事にもつながります。起きうるリスクが分かっているのですから、それが起きないように行動できるので、内容も質もあがります。
そして、想定しなかったリスクが起きた場合の対応策も設定していくと、想定外のことが起きても、動揺せず、冷静に次の対策を考えられる状態をつくれます。
さらに加えて、思うように行動が進まない時や、想定外のことが起きた時の感情のマネジメントもリスク対策に入れておくとより安定した行動がとれるとうに思います。
まとめ
これまで、BIG THINGSという本の解釈をもとに、ビジョンや目標達成に向けたプロジェクトの失敗の原因から、成功に導く方法を考えてきました。
理念経営やビジョン経営が上手くいかない事例が多く、理念やビジョンが絵に描いた餅になっていることを数多く見受けます。
目標が大きければ大きいほど、これも絵に描いた餅になっていることも多くみます。これらは、みな行動計画が曖昧になっているように思います。
目標達成の為の行動が分からないという事もあると思いますが、この場合も、「分からない」ことを自覚して、現状の行動を進めながら、成果を生む行動を、専門家などの他者の力を借りながら見つけることが大切だと思います。
皆さん、是非この機会に、今の行動の検証をしてみてはいかがでしょうか!