人生や仕事で目的は必要だと言うけれど、本当に必要なのか?

「目的を持て。目標を明確にしろ。」
これは、長い間、私が自分にも他人にも言い続けてきた言葉でした。
成果を出すためには目的が不可欠であり、目的が曖昧であれば行動がブレる。
そう信じて疑いませんでした。

しかし今、私はそう考えることで、達成できていたはずの成果を逃していたと考えています。
そして、多くの人に目的を押し付けることで、彼らの自尊心を傷つけ、自立の芽を摘んでいたことにも気づきました。

この記事は、かつての私と同じように
「目的を持たなければならない」
と強く思い込んでいる方に向けて書いています。

 目的は大切。しかし、目的を「持たせよう」とするのは逆効果

目的そのものが不要と言いたいわけではありません。
人生の方向性を定めるうえで、目的は重要な役割を果たします。

問題は、目的がない状態を“悪”と決めつけることです。

私は長年、コーチとして、上司として、リーダーとして、
「目的を持てば人生は変わる」
という信念を持っていました。

だからこそ、迷っている人、停滞している人を見つけると、
「君は何を目指しているのか?」
「目的を持たないと成長できないぞ」
と強く促してきました。

しかし、それは結果として逆効果でした。

目的がない時期の人に目的を迫ることは、
栄養を蓄える準備が整っていない種子に、強制的に肥料を与えるようなものです。
外から押し付けられた目的は、内側の力になりません。
むしろ、
「自分は何をしたいのか分からないダメな人間だ」
という自己否定を生み、自尊心を奪い、自発性を弱めてしまいます。

私はようやく、その事実に気づきました。

目的がない時期は“停滞”ではなく“静かな準備期間”

人は、いつでも目的を明確にできるわけではありません。
人生には必ず「目的が見えない時期」があります。

これは怠惰でも逃げでもなく、むしろ自然なプロセスです。

  • 価値観が揺れている時期
  • エネルギーを蓄えている時期
  • 視野を広げている時期
  • 自分でもよく分からない感情が育っている時期

目的とは「自分の内側で育つもの」。
焦りや不安から無理に作ると、ただの“偽物の目的”になってしまいます。

目的が見えていない人に対して
「今を大切にしていい」
と言えるようになって、初めて私は人を本当の意味で尊重できるようになりました。

目的は“考えて生み出す”ものではなく、“行動の後ろからついてくる”もの

多くの人は、目的を先に決めようとします。
しかし実際には、目的は後からついてくるものです。

行動 → 感情 → 気づき → つながり → 目的

この順番です。

たとえば、ある若手社員は
「目的が見つからない」と言いながら、休日になると必ずカメラを持って出かけていました。
私は以前なら「どんな人生の目的があってやっているのか?」と言っていたでしょう。

しかし今は違います。

目的を急かす必要はありません。
行動の喜びは、やがて目的の種になります。
その人が何に心を動かされ、何に没頭し、どこにエネルギーが流れていくのか
それが自然に集まってきた時、生きる方向性が初めて見えてくると考えています。

目的は、そんな流れの中で、内から沸き上がる結果であり“副産物”でもあるのです。

 目的を押し付けると、人は動けなくなる

逆に、目的がない人を肯定すると、人は動き始める

かつての私は
「目的がないから行動できないのだ」
と思っていました。

しかし実際は逆でした。

目的を押し付けられた人ほど、

  • 行動の自由を奪われ
  • 自分で決める力を削がれ
  • 失敗を恐れるようになり
  • 動けなくなる

という現象が起きます。

私がしていたのは、まさにこの悪循環をつくることでした。
目的を持つことを強要することで、自立を阻害していたのです。

いま、私は次のように考えています。

目的のない人を肯定することは、その人の自尊心を守り、主体性を育てる最良の関わり方である。

この姿勢があって初めて、人は自分の力で目的を見つけられるようになります。

 最後に:目的が見えない時期も、人生の大切な一部です

もし今、あなたが
「目的が見えない」
「目的が持てないことが不安だ」
と感じているなら、それはごく自然なことです。

目的を持つことが“正義”ではありません。
目的がない時期にも、多くの価値があります。

  • 内側の声を聞ける
  • 自分のペースを取り戻せる
  • 新しい感性が育つ
  • 偶然の出会いや発見が起こる
  • 本物の目的がゆっくり育つ

目的は、あなたの人生が十分に熟したとき、必ず現れます。

焦らなくていい。
急がなくていい。
まずは、今を丁寧に生きることから始めてください。

それが、未来のあなたの目的を育てるいちばん確かな方法です。

部下の課題は、あなたの課題ではない

「“当たり前”だからこそ見落とす――課題の分離が部下の主体性に与えるインパクトとは」

部下にはもっと自発的に動いてほしい。
もっと自分で考え、挑戦し、責任を持って行動してほしい。
そう願うリーダーやマネージャーは少なくありません。

むしろ、それが当たり前の考え方であり、多くの企業でも「主体性のある人材を育てよう」と掲げられています。

しかし、実際の現場を見渡すとどうでしょうか。

「この件、君どう思う?」と一応は部下に意見を聞きながら、最終的な判断はいつも自分が下す。
「任せる」と言いながら、部下がやろうとすると気になって口を出してしまう。
「うまくいかなかったら自分の責任になるから…」と、つい手を差し伸べてしまう。

――こんな場面、思い当たることはありませんか?

実はこれ、部下の成長を願っているはずのリーダー自身が、無意識のうちに部下の課題まで引き受けてしまっている状態です。

そして、この状態が続くと、部下は「自分で考える必要がない」と感じ、ますます指示待ち・依存型の人材になってしまいます。

一見「良かれと思って」やっている行動が、実は主体性を奪ってしまっている。
そして、その背景には、「課題の分離」ができていないというリーダー側の構造的な問題があるのです。

本記事では、コーチングやマネジメントの根幹を支える「課題の分離」の視点から、なぜ部下の主体性が育たないのか、そしてどうすれば変えられるのかを深掘りしていきます。

「相手のために」と思ってやってきたことを、少し見直すことで、部下の行動は劇的に変わります。その鍵は、実は“自分がどう関わるか”にあるのです。

なぜ「課題の分離」が不可欠なのか?

「課題の分離」とは、「最終的にその行動の結果を引き受けるのは誰か」という視点をもって、課題を「自分の課題」と「相手の課題」に分けることです。

この考え方の源流には、心理学や哲学の視点に通じる「責任の所在」の問題があります。特にコーチングや人材育成においては、行動の主体と結果の責任を明確にすることが成果を左右します。

課題を分離することで、「誰が何を担うのか」が明確になり、部下は自ら考え、実行する主体へと成長します。

逆に、課題が未分離のままだと、部下は自分で考えようとせず「待ち」の姿勢になりやすく、上司の介入が増えるほどに、自律性が失われていきます。

現場で陥りがちな「課題の分離不足」

判断の先回りで主体性を奪う上司

「どう思う?」と聞くものの、判断を聞かずに自分で決めてしまう。そして、部下は意見を出す機会を持てなくなり、徐々に「自分は何も決められない」と感じてしまう。このような状況は、部下の判断を上司が奪ってしまう“課題の侵食”です。

“場づくり”を上司の課題と認識しない

会議や1on1で意見が出ないとき、上司は「部下が消極的」と見なしがちです。しかし、実際には、部下が安心して話せる「場」をつくることこそ、上司側の課題です。

意見が出ないのは、上司の働きかけや雰囲気づくりが不足していることに起因している場合が多いのです。

部下の課題を“代行”してしまう構図

「やっておいて」と依頼したタスクを、部下が取り掛かる前に上司が手を出してしまう。あるいは、完了前に口を出して軌道修正してしまう。これでは、部下は「自分がやる意味」を見出せなくなります。結果として、行動も成長も止まってしまうのです。

今日からできる“課題の分離”アクションプラン

「場づくり」を自分の課題として認識する

1on1や会議では、上司がまず質問を投げ、沈黙を受け入れる姿勢を示すことが重要です。発言しやすい雰囲気を意識的に設計することで、部下の思考と対話が動き始めます。

課題を具体化し、分けて共有する

たとえば、「提案資料の改善はあなたの担当」「優先順位の調整は私がフォローする」といった形で、業務の中で役割と責任を言語化し、お互いの行動領域を明確にして共有します。

振り返りの主導権を部下に持たせる

業務終了後やプロジェクトの節目に、「なぜその判断をしたのか?」「何を学んだのか?」を部下自身に語らせる場を設けます。上司はフィードバック役に徹することで、学習と成長の循環が生まれます。

まとめ:今日から実践できる「課題の分離」の第一歩

リーダーとして、部下に成長してほしい、主体的に動いてほしい。
そう願うのは当然のことですし、それ自体は間違っていません。

しかし、部下の主体性は「願うだけ」で育つものではありません。

むしろ、その芽を摘んでしまっているのは、他でもない私たちリーダー自身であることに気づくことが、最初の一歩です。

コーチングの本質とは、「相手を変えること」ではなく、自分の関わり方を変えることで、相手が自ら変わる“環境”をつくること。
そのために必要なのが、「課題の分離」という視点です。

今すぐ始められる、3つの小さなアクション

  1. 「これは誰の課題か?」を自問する習慣を持つ
  2. 部下に「任せたこと」は、任せきる勇気を持つ
  3. 週1回、1on1などで「課題の分離マップ」を書いてみる

主体性のある人材を育てたいなら、まずはリーダーが“手放す”こと。
課題の分離は、単なる理論ではなく、リーダー自身が変わる覚悟を持つ実践の入り口です。

今日からぜひ、あなたのリーダーシップにこの視点を取り入れてみてください。
きっと、部下との関係性も、組織の動き方も、少しずつ変わっていくはずです。

なぜ、上司は、部下のコーチングができないのか

企業内でコーチングを効果的に行い、気持ちよく成果を引き出すための方法

成果を早く出したい…成果を出せる人材に育ってほしい…。多くの経営者やマネジャーが、そんな「相手を変えたい」という思いに突き動かされ、つい部下にアドバイスや圧力をかけてしまいがちです。しかしこの「変えてやろう」とする姿勢こそが、コーチングを遠ざける最大の障害になっているのです。

コミュニケーションが圧力に変わり、信頼が揺らぎ、結果的に成果も成長も遠ざかってしまう。このジレンマに直面した時にこそ、「相手の成長は本人が主体的に選択してこそ、成果は生まれる」という本質的な視点が求められます。

成果と成長~企業のジレンマを乗り越えるために

企業としては、「すぐ結果がほしい」「部下には早く成長してほしい」という期待があります。しかし、その一方で、コーチングに必要な「待つこと」「対話に時間を使うこと」は、短期成果を求める構造においては後回しにされやすいのが現実です。

このジレンマを実感するのが、中小製造業のA社の事例です。A社長は、「もっとスピード上げてくれ」と部下に強く求め、具体的な指示と細かい承認作業を続けた結果、一時的に業績は上がったように見えました。しかしじわじわと部下からは「指示を待つだけの人たち」が増えてしまいました。そこで「あなた自身ならどう変えたい?」と質問に変えてみると、部下から自発的な改善案が出てきて、品質も納期も同時に向上したのです。

短期成果を追うあまり、本質的な成長を犠牲にしてしまうことのないよう、「成果と成長を両立させるための対話」をいかに組織に定着させるかが、今まさに求められています。

「相手を変える」の罠:失敗の原因と見直し

「もっとやる気を出して」「考え方を改めてほしい」~と強く願うとき、つい圧が対話にのしかかってしまいます。この圧が強まると、部下は「やらされ感」や「拒否感」を抱いてしまい、信頼関係が揺らぎ、結果として学習も停滞してしまうことになります。

心理学的には、自己決定理論(Self-Determination Theory, Deci & Ryan)が示すように、人は「自分で選び、意思を持って行動するときにこそ、最もパフォーマンスを発揮しやすい」と説かれています。

この視点を持つことで、「相手を変える」という発想を「相手が自ら変わりたくなる環境を作る」というコーチングの本来の姿勢に変えていくことが重要な視点になります。

何もしない勇気の本質:アドバイスは不要、立ち止まって聞く力

多くのマネジャーは、自らの知識や経験を用いて部下を指導することこそ、マネジメントの任務であり役割だと考えがちです。

たしかに、経験前提のアドバイスや判断力が必要な場面も少なくありません。しかし、コーチングにおいてはめむしろ「自ら動かずに部下に考えさせる」ことのほうが優先されます。

これは、一見すると「何もしない上司」に見えることもあるかもしれません。実際、周囲からは「放件している」「部下任せだ」と評されるリスクもあるでしょう。

しかしここにこそ、勇気が必要なのです。

相手を信じ、やる気と成長力を信頼して「話さず」「口出ししない」。上司の存在感や有用感を控えることは、ある意味「我慢」を要する行為でもあります。

これは放置ではありません。「見守る」「相談を待つ」「真に助けが必要なときにだけ手を展べる」という、高度なマネジメント技術です。

「何もしない勇気」は、何もしないことを行動で選択し続ける、最も難易度の高いリーダーシップの形とも言えるでしょう。

まとめ:「変えよう」から「変わるのを待つ」へ

「相手を変えてやろう」とする姿勢が、コーチングの本質を損ねてしまいます。部下の成長は、本人が自ら考え、選び、行動してこそ本物になります。

そのためには、マネジャー自身が「何もしない勇気」を持ち、自分の存在感を控え、部下が考え行動する空間を守ることが不可欠です。

今日から実践できる小さな一歩として、1on1の場面でアドバイスを飲み込み、「あなたはどう考える?」という一言を意識してみてください。

“信じて、待つ”。この姿勢こそが、これからのリーダーに最も必要な資質ではないでしょうか。短期的な視点ではなく、少し長い目で見れば、“信じて待つ”ことが、結局は早道であることに気づくと思います。

社員が動かない、それは、リーダーの思考が固まっているからではありませんか?

「社員が動かない」の裏にある、リーダーの思考の壁とは?

「もっと主体的に動いてくれたら…」
「何度も伝えているのに、なぜ伝わらないのだろう」
「未来を語っているはずなのに、現場がついてこない」

こんな思いを抱いたことはありませんか?
中小企業の経営者や経営幹部、リーダーとして日々の業務に向き合う中で、こうした課題に直面している方は少なくありません。

経営者や幹部の皆さんは、日々多くの決断を下しています。その決断は自分ひとりのものではなく、社員、顧客、取引先、さらには地域社会にまで影響を及ぼします。だからこそ、「決断の質」は、組織の未来を大きく左右する要素となるのです。

しかし、どれだけ明確なビジョンを掲げても、社員が主体的に行動しなければ、そのビジョンは絵に描いた餅のまま終わってしまいます。つまり、経営者やリーダーには「決断の質」だけでなく、「人を動かす力」も同時に求められるということです。

では、その「決断の質」を高め、現場の行動を変えるためには、一体何が必要なのでしょうか。

情報や知識だけでは、現場は変わらない

「意思決定の精度を上げるには、まず情報収集だ」
「本を読み、勉強し、知識を増やすことが大事」

確かに、知識や情報は欠かせません。しかし、実際の経営現場で成果を生み出すのは、知識そのものではありません。

真に問われるのは、数ある選択肢の中から「自分の目的に合った行動を選び取る力」です。そしてこの力は、単なる知識の蓄積では得られません。

なぜなら、人は誰しも、無意識のうちに「過去の経験」や「常識」とされる枠組みの中で物事を判断してしまうからです。その枠の中にいる限り、新しい行動や革新的な発想を生み出すことは難しいのです。

経営判断に影響を与える「思考の枠」

この「思考の枠」は、過去の成功体験や業界の慣習、自分自身の価値観などが積み重なって形成されています。無意識にその枠に従って判断し、動いてしまうため、いくら新しい情報や知識を得たとしても、行動が変わらないというジレンマに陥るのです。

例えばある中小企業の経営者は、業績が頭打ちになっているにもかかわらず、「このやり方で20年やってきたから間違っていない」と言い切っていました。しかし、コーチングを通じて自分の思考パターンに気づいたことで、「変えるべきは社員ではなく、まず自分の考え方だった」と発見し、戦略転換に踏み切ることができたのです。

このように、自分では気づきにくい「思考の枠」を意識化することが、新たな一歩の始まりになります。

思考の枠を打ち破る「コーチング」という選択

そこで有効なのが、コーチングという手法です。

コーチングとは、問いかけと対話を通じて、本人が自らの内面と向き合い、自ら答えを見出していくプロセスです。これによって、思考の枠に気づき、その外側にある選択肢や行動の可能性に気づくことができるのです。

特に経営者やリーダーにとってのコーチングの価値は、以下の3点に集約されます:

1. 無意識のパターンに気づける

自分一人では見えない「思考のクセ」「固定観念」に気づくことで、新しい選択肢が見えてきます。

2. 自分軸で意思決定ができる

外部の期待やプレッシャーに流されるのではなく、自分の目的や価値観に基づいた判断ができるようになります。

3. 現場との橋渡しができる

明確なビジョンと、自分自身の内側から湧き出る動機づけによって、現場への伝え方や関わり方にも変化が生まれ、社員の主体性を引き出すリーダーシップが発揮できるようになります。

まとめ:まずは「自分の思考の枠」に気づくことから始めよう

社員が動かない。現場がついてこない。
その裏には、経営者やリーダー自身の思考の枠が関係していることがあります。

だからこそ、「もっと伝え方を変えよう」「もっと勉強しよう」といったアプローチの前に、まずは「自分の思考の枠」に気づくことが大切です。

その一歩として、コーチとの対話を取り入れてみてはいかがでしょうか。
外部の視点を持ち、問いかけを通じて思考の枠を越えることで、これまでとは異なる選択と行動が可能になります。

あなたの決断が、社員の行動を変え、組織の未来を切り拓く起点となるのです。